ニューヨークを彩る名脇役たち─ハト、リス、そしてタカ

ハト、リス、そしてタカ、大都会ニューヨークで暮らす動物たち NEW YORK
ハト、リス、そしてタカ、大都会ニューヨークで暮らす動物たち

ハト、リス、そしてタカ。大都会ニューヨークでは、実に様々な野生動物たちが生活しています。初めてニューヨークを訪れた方は、リスやハト(そしてネズミ!)の多さに驚くかもしれません。少し公園を歩くだけで、数匹のリスやハトの大群を見かけることでしょう。こうしたニューヨーク独特の環境に適応し、生活を続けている動物たち。それでは、今回は、彼らに焦点を当ててみましょう。

ハト、リス、そしてタカ、大都会に暮らす動物たち

ハト:ニューヨークを象徴する鳥

北米に生息するハトのうち、ニューヨークでよく見かけるのは4種類(+1)のハトたちです。まず、一般的にハト(Pigeon)と呼ばれる「カワラバト(Rock Dove)」。次に、同じハト科(Columbidae)グループに属するナゲキバト Mourning Dove(Zenaida macroura)。他にも、ヨーロッパコキジバト(Eurasian Collared-Dove)、ハジロコバト(White-winged Dove)、ユーラシアコラードダヴ Streptopelia decaocto(Eurasian Collared-Dove)などがいます。

都会のビル群や豊かな緑、そして豊富な食料供給源があることが、彼らの生存を助けています。さらに、都市の温暖な気候も大きいです。そのため、一年中繁殖が可能で、ひと組のハトは、年に複数回繁殖します。そのため、数を増やしていく理由も頷けます。ハトを「ニューヨークを代表する鳥」と呼び、ハトをモチーフとした創作活動をするアーティストも存在します。

ニューヨークに生息する主なハトの種類

カワラバト Rock Dove/Pigeon(Columba livia)
  • 特徴: カワラバト(野生鳩)には様々な種類があります。一般的に「ハト(Pigeons)」と呼ばれるのが、この種です。頭、首、胸が濃い灰色で、翼と下側が薄い灰色です。また、様々な色合いの灰色の羽毛に、首元の青や緑紫の光沢のある虹色の羽があります。さらに、赤みがかった色や、純白のものもあります。特徴的なのが、翼の2本の黒い帯です。非常に社交的で大きな群れで行動します。また、人間に対して臆することなく、頻繁に食べ物を探し回ります。喉の奥から出すような「グーグー」という声が特徴です。
  • 生息地: 原産地はヨーロッパ、アジア、北アフリカの特定地域で、ほぼすべての大陸に生息します。アメリカでは、カナダ北部を除くほぼすべての地域にいます。はじめに、17世紀に北アメリカに家禽として持ち込まれました。その後、逃げ出したり放された鳥が野生化し繁殖しました。野生の生息域において、カワラバトは崖や岩壁に生息します。そのため、大都会のビルや橋などの都市環境が、この形態にフィットしました。適応力が高く、人間の食べ物が豊富にある場所を好みます。
  • 食性: 雑食性で、主に穀物、種子、果物などを食べます。また、パンなどの都市部の人間の食べ残しを食べることでも知られています。さらに、地面に沿って移動し、餌を食べながら目的の食べ物をついばみます。
  • 個体数: ニューヨーク市には約100万羽のカワラバトがいると推定されています。
ナゲキバト Mourning Dove(Zenaida macroura)
  • 特徴: まず、名前の由来である、柔らかく悲しげな「クークー」という声が特徴です。このリズム感のある穏やかな鳴き声には多くのファンがいます。カワラバトよりも小型でスリムな体型で、体長は約30〜33cmです。薄茶色から黄褐色の羽毛で、胸にわずかにピンクがかった色合いです。さらに、翼に青みを帯び、首の側面や顔の両側にうっすらと黒い斑点を持ちます。休んでいる時はずんぐりとした体つきです。また、長いとがった尾が特徴で、優雅な印象を与えます。一般的には、臆病で孤独を好む傾向ですが、飛行は速く直線的です。さらに、カワラバトほど社交的でなく、つがいでのんびりする姿がよく見かけられます。
  • 生息地: 北アメリカ原産で、アメリカのほとんどの地域に一年中生息しています。冬には中央アメリカやメキシコ南部まで、また夏にはカナダ中南部まで移動します。しかし、特に渡り鳥という訳ではありません。都市部よりも郊外や田舎の環境を好み、比較的静かな場所に多く生息しています。静かな森林、裏庭、公園、野原、農村部や郊外の庭などの開けた草地が好みです。電線に止まり、草むらの地面で餌を食べている姿もよく見かけます。
  • 食性: 種子や小さな果物を好み、地上で餌を探している姿をよく見かけます。餌箱には定期的に訪れ、プラットフォームの餌箱や餌箱の下で餌を食べています。
  • 個体数: 数万羽程度と推定されています。しかし、カワラバトより少ないです。
ヨーロッパコキジバト(Eurasian Collared-Dove)
  • 特徴: ヨーロッパコキジバトはかなり大型の鳥で、全体的に砂灰色をしています。特定の光の下では、胸が少しピンク色に見えます。この鳥の名前は、首の後ろの白い縁取りのある黒い模様に由来しています。
  • 生息地: ヨーロッパコキジバトは、ヨーロッパ、アジア、アフリカの一部原産です。アメリカに持ち込まれて繁殖し、年間を通じてアメリカ全土に生息しています。アメリカ西部に最も多く、北東部では最も少ない密度となっています。メキシコと中央アメリカにも生息しています。この種は、都市部や人間の居住地近く、鳥の餌箱や農地でよく見かけられます。地面に止まることもありますが、電線の上にいる姿をよく見かけます。
  • 食性: ベリー類、葉物野菜、トウモロコシなどさまざまな食物を食べます。しかし、食事の大部分は種子や穀物です。このため、農地内やその周辺で餌を食べている姿も目撃されます。
ハジロコバト(White-winged Dove)
  • 特徴: ハジロコバトは灰褐色で、翼、頭、背中はより茶色、下側はより灰色です。目の近くには青があり、頬には黒い斑点があります。名前は、止まっている時も飛んでいる時も見える「翼の白い模様」から付けられました。この模様に加えて、尾羽の先端にも白い部分があります。ハジロコバトはメキシコと米国南部の一部に一年中生息しています。冬にはメキシコ湾岸でよく見かけられます。夏には少し北に移動し、米国南部のより多くの地域に生息します。
  • 生息地: ハジロコバトは、茂みから砂漠、都市環境まで様々な場所で見られます。鳥の餌箱に寄ってくるので、裏庭などの餌箱付近を注意して観察してみてください。ハジロコバトの鳴き声はナゲキバトに似ていますが、より低く、より荒々しい声です。
  • 食性: ハジロバトは主に種子を食べますが、果物も食べます。砂漠地帯ではサワロサボテンの果実を食べることが知られています。都市部ではトウモロコシなどの農作物を食べることが多いです。
  • 個体数: 非常にレアです。夏の時期にニューヨーク近郊で見られることもあります。
ユーラシアコラードダヴ Streptopelia decaocto(Eurasian Collared-Dove)
  • 特徴: ユーラシアコラードダヴ(Eurasian Collared-Dove)は、ナゲキバトとよく間違われます。体長は約33〜36cmと少し大きめです。ナゲキバトには見られない特徴的な黒い「襟」のような斑点が首の後ろにあります。色は灰色で、若干ピンクがかった色合いを持ち、尾は四角い形をしています​。
  • 生息地: ニューヨーク市で初めて目撃されたのは2000年代初頭です。2001年にロングアイランドやアップステートのハムリンで初めて目撃されています。その後も個体数が増加しています。元々はヨーロッパとアジアの一部地域に生息鳥です。1980年代にフロリダに持ち込まれ、急速に北アメリカに広がりました。都市部や郊外など人間活動の多い場所で、大きな群れで見られるます。​「クークー、クークー、クー」という声は、ナゲキバトよりも大きく響き渡ります。
  • 食性: ヒマワリの種、キビ、小麦、大麦やトウモロコシなどの種子を食べます。庭や野生の小さな果実やベリー類、都市部ではパンくずや残飯なども食べます。草食性ですが、他の食料が不足している時には、小さな昆虫や無脊椎動物を食べます。主に地面で採餌しますが、鳥の餌台から食べることにも慣れています。この柔軟な食性が、生息地に適応し、広範囲に分布を広げる理由の一つです。
  • 個体数: 非常にレアです。ユーラシア・コラード・ダヴはニューヨークの在来種ではありません。しかし、近年、個体数の増加が注目されています。現在のところ狩猟シーズンは指定されておらず、野生動物管理における懸念もあります。

リス:都市の素早い探検者

公園や街路で一般的なのが、東部灰色リス(Eastern Gray Squirrels)です。北アメリカ原産で、都市生活にうまく適応しています。彼らは木やフェンス、電線を巧みに移動する能力を持っています。

リスは人間の活動から恩恵を受け、公園を訪れる人々から餌をもらい暮らしています。セントラルパークやプロスペクトパークなどは、彼らの生息地となっています。一方で、庭を荒らしたり、インフラを齧ったりなどの被害を引き起こすこともあります。そのため、時に苦情の対象になることもあります。

ニューヨークシティに生息する主なリスの種類

東部灰色リス Eastern Gray Squirrel(Sciurus Carolinensis)
  • 特徴: 中型で灰色の毛皮、白い腹部、ふさふさした尾が特徴です。遺伝的な変異により黒や白の毛を持つ個体も見られます。
  • 生息地: 公園や庭園、並木道などで一般的に見られます。
  • 食性: ナッツ、種子、果物、小さな昆虫を食べます。
  • 個体数: ニューヨーク市には約200万匹の灰色リスが生息していると推定されます。
アカリス Red Squirrel(Tamiasciurus Hudsonicus)
  • 特徴: 灰色リスより小型で、赤みがかった毛皮と白い腹部が特徴です。
  • 生息地: 主に森林地帯に生息し、都市部で見かけることは稀です。
  • 食性: 主に針葉樹の種子やナッツを食べます。
  • 個体数: ニューヨーク市に生息するのは、推定数千匹未満とされる珍しい存在です。

タカ:空の捕食者

ニューヨークを代表する動物で、忘れてはならないのがタカです。一時は生息地の喪失やDDTのような農薬の影響で絶滅の危機に瀕していました。しかし、その後見事な回復を遂げました。特に、アカオノスリ(Red-Tailed Hawks)の復活例は、自然保護の観点からも大きな注目を浴びました。

タカは、ハト、リス、ネズミといった豊富な獲物を捕らて生き延びています。彼らも高層ビルや木に巣を作り、都市生活に見事に適応しているのです。セントラルパークで暮らすアカオノスリ「ペール・メイル(Pale Male)」のように、市民に愛される有名なタカもいます。彼らの存在は害獣の数を抑えるため、多くの住民に歓迎されています。一方で、小型ペットへの脅威や小鳥の生息数への影響を心配する声があるのも事実です。

ニューヨークシティに生息する主なタカの種類

アカオノスリ Red-Tailed Hawk(Buteo Jamaicensis)
  • 特徴: 赤茶色の尾、幅広い翼、淡い腹部を持つ大型の猛禽類で、その鋭い鳴き声が特徴です。
  • 生息地: 高層ビルや大木に巣を作り、公園の上空を舞う姿がよく見られます。
  • 食性: ハト、リス、ネズミなどの小型哺乳類を捕食します。
  • 個体数: ニューヨーク市内には約20~30組の繁殖ペアがいると推定されています。

クーパーズホーク Cooper’s Hawk(Accipiter Cooperii)

  • 特徴: 中型のタカで、長い尾、短い翼、鋭いくちばしを持っています。背中は青灰色、胸は赤茶色の縞模様です。
  • 生息地: 公園の森や郊外地域で見られます。
  • 食性: 小型の鳥や哺乳類を捕食します。
  • 個体数: クーパーズホークの数は比較的少なく、市内に約50~100羽と推定されます。
ハヤブサ Peregrine Falcon(Falco Peregrinus)
  • 特徴: スリムで高速飛行が特徴の猛禽類で、暗灰色の翼と淡い縞模様の胸を持ちます。そのダイビングスピードは特に有名です。
  • 生息地: 自然の崖に似た高層ビルや橋に巣を作ります。
  • 食性: 主にハトなどの鳥を捕食します。
  • 個体数: ニューヨーク市では約40組の繁殖ペアがいると推定されています。

自然と都市生活のバランス

ニューヨーク市のエコシステムには、ハト、リス、タカなど多様な種が生息します。個体数は種によって異なりますが、彼らは都市環境に適応しその独自性を反映しながら暮らしています。彼らの存在に、ニューヨーカーたち多種多様な感情を抱いています。

ハトは、その排泄物から「羽あるネズミ(Rats with Wings)」と揶揄されます。そのため、彼らの数を抑えるための対策も取られています。例えば、餌やり禁止条例や建物への防鳥スパイク設置などです。リスは、その遊び心ある行動を楽しむ住民が多く、よりポジティブな反応です。ただし、時折見られる破壊的な行動には苦情も寄せられます。そのため、「ふさふさした尻尾を持つネズミ」などと呼ぶ人もいます。一方で、タカは、都会のエコシステムの健全性を象徴する存在。感嘆や誇りを持って受け入れられています。野生動物団体は、これらの捕食者と平和的に共存する方法を市民と共に考えたいと積極的な活動を続けています。

ハト、リス、そしてタカとの、責任ある共存を推進

ハト、リス、タカの多さ。これは、ある種ニューヨーク市の自然と都市化のユニークな融合を象徴しています。確かに、問題を引き起こすこともあります。しかし、都市に生命と多様性をもたらしていることは事実です。ニューヨーカーたちは、「責任ある共存」を推進していかなければなりません。そして、野生動物が都市の特徴の一部であり、良い関係を築いていきましょう。

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