ニューヨークの愛すべき住人たち

ニューヨークの住人たち NEW YORK
ニューヨークの住人たち

「ニューヨークの好きなところはどこですか?」ニューヨークの住人たちや訪問者に聞くと、大抵の人はこう答えます。「刺激のある街だから」と。そんな答えを、大きく3カテゴリーにまとめたものが下記となります。

1、経済や政治、アートの最先端として刺激を受けられる
2、周りに関係なく、信念があれば自分の夢が叶う
3、色んな人種・文化が根付き、多様性の中で自由を感じられる

ニューヨークには、様々な国から人が訪れます。旅行者やビジネスマン、留学生など様々です。そして互いの文化を尊重しながら、異文化を感じながら生活しているのです。ニューヨークのそんな雰囲気をうまく表現する言葉が「人種の坩堝」です。国籍にこだわらない、まさに「コスモポリタン」な都市なのです。

しかし、実際、どのような人がニューヨークシティを構成しているのでしょうか。アメリカでは、10年ごとに国勢調査「Census」が行われます。前回は、ちょうどパンデミックの年の2020年に調査が行われました。2020年以降、多くの人が都市を離れたり大きな人口流動がありました。そのため、次回2030年の調査結果は、驚くものになるかもしれません。

もちろん、ニューヨーク市の5つの行政区(ファイブボロ)でも調査をしています。現時点で最新の、2020年のニューヨークの形はどうなっているのでしょうか。ここで少し見ていきたいと思います。下記はファイブボロを、人口の多い順に並べてみました。

人口とコミュニティ

Brooklyn(ブルックリン)キングス郡

人口: 約274万人

ブルックリンには、274万人が暮らしています。2010年以降の増加傾向を反映し、今も依然として最も人口の多い行政区です。ブルックリンには、豊かなコミュニティが存在します。特に、クラウンハイツやウィリアムズバーグなどは、カリブ諸国、正統派ユダヤ教、東ヨーロッパ系の住民が多く住んでいます。

ダウンタウンブルックリン、ウィリアムズバーグ、ブッシュウィックなどでは、住宅開発がとても活発です。そして、この10年間で街の雰囲気も大きく変わりました。

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New York City Population

Queens(クイーンズ)

人口: 約240万人

クイーンズの人口は約240万人と、ブルックリンの274万人に続きます。アメリカ国内でも、最も民族的に多様な地域として知られるています。特に、ラテンアメリカ、南アジア、東アジアのコミュニティが目立ちます。さらに、最大のヒスパニック系、アジア系のコミュニティが存在します。エクアドル人、ドミニカ人、中国人など特定のグループが、この多様性に大きな貢献をしています。

クイーンズは、マンハッタンに比べて手頃な価格で暮らせます。また、主要空港に近いことからファミリー層にも人気で、人口増加を続けています。特に、フラッシングやジャクソンハイツ、エルムハーストなどの地区。ここでは、活気のある文化シーンを見ることができます。また、ロングアイランドシティ地区の急速な発展も特徴的です。

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Manhattan(マンハッタン)

人口: 約170万人

マンハッタンの住人は、約170万人です。言わずと知れた、金融と文化の中心地で、その傾向は今も顕在です。特に、アッパーイーストサイド、ミッドタウン、グリニッチビレッジ地区。こうしたエリアは、主要住宅地および商業地として知られています。

しかし、人口密度は高いものの、住宅費や生活費が高いことが問題となっています。また限られた住宅供給も課題です。そのため、マンハッタンの成長率は鈍化しています。一方で、ハドソンヤードや金融街などの地域では急ピッチな住宅開発が進んでいます。

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Bronx(ブロンクス)

人口: 約147万人

ブロンクスには147 万人が住み、ヒスパニック系コミュニティが成長を続けています。特に、ドミニカ系やプエルトリコ系が中心です。かなりの数のヒスパニック系住民が生活基盤を築いています。ワシントンハイツやサウスブロンクスは、市内で最も高いヒスパニック人口です。

ブロンクスでは低所得者向けの住宅開発が進んでいます。そして、それに合わせて人口も着実に増加しています。また、ブロンクス動物園やヤンキース・スタジアムなど、主要文化の中心地でもあり続けています。

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Staten Island(スタテン・アイランド)リッチモンド郡

人口: 約49.6万人

最も人口が少なく、約49万6,000人が生活しているのがスタテンアイランドです。イタリア系アメリカ人のコミュニティが主流です。そして、その多くがサウスショア近郊に集中しています。

他の自治区に比べて人口増加は緩やかです。この地域は、より郊外的な雰囲気が残っています。そして、住宅所有者の割合が、賃貸者よりも高いのも特徴です。また、スタテンアイランドは他の自治区に比べて公共交通機関がほとんどありません。そのため、開発パターンにも影響を及ぼしています。2010年からの10年で、他の行政区と比べると大きな成長は見られませんでした。

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人種と民族に見る、ニューヨークの住人たち

次に、ニューヨーク市各エリアの人種と民族構成について見てみます。

白人

白人層は、マンハッタンとスタテン島に最も住んでいます。アッパーイーストサイドや、ブルックリンのベイリッジの一部など。こうした特定地域にも白人層が集中しています。スタテン島住民の約60%は白人層です。

黒人またはアフリカ系アメリカ人

黒人層が多く住むのは、ブルックリンとブロンクスです。特に、ベッドフォード・スタイベサント、イースト・フラットブッシュ。そして、ハーレムにも集中しています。ブロンクスには、約29%の黒人居住者がいます。さらに、サウスイースト・クイーンズ、ジャマイカ。こうしたエリアにも、アフリカ系アメリカ人が多く生活しています。

ヒスパニックまたはラテン系

プエルトリコ、ドミニカ、メキシコ出身のヒスパニック人口はどうでしょう。ブロンクスとクイーンズの一部で最も多く見られます。ドミニカ人は、マンハッタン北西部のワシントンハイツで最大のグループを形成。ブロンクス地区にも広く分布しています。また、プエルトリコ人のコミュニティは、イーストハーレムとサウスブロンクスでも存在感を発揮しています。

アジア人

アジア人層は、クイーンズに集中しています。特に、フラッシングやエルムハーストなどの地区です。ここでは、中国人やその他のアジア人が多数を占めています。マンハッタンのチャイナタウンやブルックリンのサンセットパーク。ここでは、アジア人の住民が人口の大部分を占めています。

これらの統計を相互的に調べてみましょう。人種や年齢分布、人口統計データを深く掘り下げることができます。例えば、ニューヨーク市都市計画局の「Population FactFinder」。そして、「Population MapViewer」などは非常に貴重な資料です。行政区やコミュニティ地区ごとの最新人口統計もあります。そのため、ニューヨーク市の人口動態を詳細に分析することができます。

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パンデミック後5年間の、人口動態の変化と傾向

パンデミックの影響で、2020年から2021年にかけ多くの住民が移住しました。都市部から郊外や他州へと移住し、約28万2000人の人口減少となりました。特に、マンハッタンからは若年層や富裕層の家族が多く流出しました。主な要因としては、高い生活費、リモートワーク拡大があります。また、健康リスクの懸念もその一つです。労働参加率が低下しま、ミッドタウンのようなビジネスエリアでその動きは顕著でした。また、市外に移住したまま戻らない人々も多く、労働市場はまだ完全に回復はしていません​。

一方、クイーンズやブロンクスといった外部の区では、異なる動きでした。例えば、クイーンズでは、マンハッタンほどの住民流出はありませんでした。手頃な住宅価格や家族ネットワークの近接性が、その要因とされています。また、ブロンクスでは移民や流入希望者が目立ちました。そのため、2022年初頭から約13万人が新たに居住するようになりました。そのため、住宅、教育、医療サービスの需要も急増しています​。

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出身国別に見る人工分布図

ニューヨーク市の移民総人口は約310万人

ニューヨーク市には、多様な国からの移民が暮らしています。移民総人口は推定で310万人超え。2022年のデータによれば、これはニューヨーク市総人口の約36.8%にあたります。一部の地域ではその割合が50%を超えます。

主な出身国としては、ドミニカ共和国、中国、メキシコ。その他、ジャマイカ、インドなどです。特に、中央アメリカや南アジアからの移民が多く増加傾向にあります。また、バングラデシュやパキスタン出身者も多くいます。ドミニカ系コミュニティはワシントンハイツに、中国系はフラッシングやサンセットパークにあります。そして、南アジア系はクイーンズのジャクソンハイツなどに集中しています。

ドミニカ系住民は全体の約11%

まず、市の移民全体の約11%を占めるのがドミニカ系住民です。およそ49万1,000人が在住しています。次に多いのは中国系で、移民人口の約9%、約40万1,000人です。メキシコ、ジャマイカ、インドからの移民も重要なコミュニティを形成しています。そして、ニューヨーク市の豊かな文化的多様性に寄与しています。

ニューヨーク市の人口は非常に多様です。そして、様々な人種や民族グループが共存している街なのです。市の人口は、移住パターンや経済的な変化によって変動を続けています。特に、最近のは人口構成に大きなシフトが見られます。こうした状況にも関わらず、ニューヨーク市は依然として活気に満ちた多文化社会なのです。​

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ニューヨーク市の人口推移

ここからは、ニューヨーク市の過去10年間の人口推移を見てみましょう。

ニューヨーク市の推定人口、約850万人

2024年のニューヨーク市の推定人口は約850万人です。この数字は、最近の数年間での若干の減少を反映しています。これは、国内移住の傾向やCOVID-19パンデミックの影響などが原因です。しかし、他にも様々な要因が複雑に絡み合っています。​

2010年国勢調査時のニューヨークシティの人口は、約833万6,817人でした。2010年から2019年までで、その数は緩やかに増加しています。しかし、2020年以降、特にパンデミックから人口は減少を続けています。2021年時点でのニューヨーク市の人口は、約846万7,513人と推定されています。

2020年からの1年で、他州への移住者数が35%増

ニューヨークの人口は、パンデミックの影響だけでなく様々な要因を受けて増減を繰り返しています。そして、今後の回復に向け、その動向に注目が集まっています。パンデミック中、4万1,000人以上の方が、COVID関連で亡くなりました。合わせて出産数も激減しています。これらの理由から、2020年からの2年間の5歳未満人口も12.5%減少しています。

ニューヨーク市から他州への移住も増えました。2020年から2021年にかけて、移住者数は前年比で35%増加しました。この流出トレンドは、パンデミック前からの傾向です。その理由の一つとして、生活費高騰や家族を育てる環境の厳しさなどが挙げられます。

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人口動態を調べるソース各種

人口調査には、アメリカ移民評議会(American Immigration Council)の資料が有効です。また、ニューヨーク市移民局(NYC Mayor’s Office of Immigrant Affairs)も役立ちます。移民グループの具体的な人数、出身国、ニューヨーク市への経済的影響など。詳細なレポートを提供してくれています。

ニューヨークシティのアジア系コミュニティの人口データは、アメリカ合衆国国勢調査局やアジアアメリカ人連盟(Asian American Federation)など、信頼できる複数の情報源があります。国勢調査局は、定期的に調査を実施し、人口動態に関するデータを発表しています。このデータには、民族やコミュニティの規模の詳細な内訳が含まれています。

アジアアメリカ人連盟も、ニューヨークにおけるアジア系人口の成長や分布に関するデータを集約し、分析を行っています。これらの組織は、アメリカのコミュニティ調査(American Community Survey、ACS)や十年ごとの国勢調査などの方法を通じて、時間の経過に伴う人口の変化を追跡しています。

次回の国勢調査は2030年

詳細な情報については、アジアアメリカ人連盟の報告書や、アメリカ合衆国国勢調査局の公式統計を参照できます。アメリカの国勢調査は、10年ごとに行われます。これは合衆国憲法に基づいており、最初の国勢調査は1790年に実施されました。国勢調査局は、この国勢調査の実施を担当しています。その結果は、連邦下院の議席数を決定したり、様々な連邦資金の分配に利用されたりしています。

次回の国勢調査は、2030年に予定されています。また、国勢調査とは別に、アメリカ合衆国には5年ごとに行われる経済国勢調査もあります。また、年間約350万件の住所をサンプリングする全米コミュニティ調査(American Community Survey)も存在します。これらは、より頻繁に国の人口や経済に関するデータを提供します​。

全米コミュニティ調査とは

アメリカには、毎年行われる公式な「人口調査」はありません。しかし、国勢調査局は、年間を通じて人口や経済に関するデータ収集する、いくつかの調査を実施しています。中でも特に重要なのが、全米コミュニティ調査(American Community Survey、ACS)です。

ACSは、毎年約350万件の住居を対象に行われます。地域の人口統計、経済、住宅、教育などに関する詳細な情報が入手可能です。この調査結果は、国勢調査の実施間隔である10年に一度の国勢調査の結果を補完します。そして、より頻繁にデータを提供する役割を果たしています​。この他にも、アメリカには、定期的な調査やデータ収集を行う多くのプロジェクトがあります。例えば、経済国勢調査(Economic Census)や、特定の分野に特化した各種調査がそれです。

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