グッゲンハイム美術館《建築探報①》

《トリビア》

グッゲンハイム美術館(ソロモン・R・グッゲンハイム美術館)

グッゲンハイム美術館は、ニューヨーク・マンハッタンのアッパーイーストサイド89丁目と5番街の1071番地、「ミュージアム・マイル」の一角に位置する美しい美術館です。開館以来、アメリカ国内はもちろん、世界のモダンアートへの理解と評価を深める、重要な役割を担ってきました。「ル・コルビジェ(Le Corbusier)」、「ミース・ファン・デル・ローエ(Ludwig Mies van der Rohe)」と並び、近代建築の3大巨匠の一人として知られるアメリカの建築家「フランク・ロイド・ライト(Frank Lloyd Wright)」氏によってデザインされた建築物です。「カタツムリの殻」のニックネームで親しまれ、外観を眺めているだけでも楽しくなってくるユニークな建造物です。毎年何百万人もの訪問者がこの美術館に訪れ、革新的なアートと建築物を楽しんでいます。

1. 歴史と設立

美術館は、アメリカの産業家で慈善家のソロモン・R・グッゲンハイムによって1939年に設立されました。当初は「非具象絵画美術館(the Museum of Non-Objective Painting)」と呼ばれ、抽象芸術に焦点を当てていました。1952年にグッゲンハイムが亡くなった後、彼にちなんで現在の名前に変更されました。

グッゲンハイム美術館は、世界中の複数の美術館を管理するグッゲンハイム財団の一部であり、スペインのビルバオやイタリアのヴェネツィアにあるペギー・グッゲンハイム・コレクション(the Peggy Guggenheim Collection)なども含まれます。

2. 建築的な重要性

建物自体は、著名な建築家フランク・ロイド・ライト(Frank Lloyd Wright)によって設計された建築の傑作です。16年の歳月をかけて完成し、700枚以上ものスケッチを描いた末に1959年に開館しました。その4層構造の螺旋状デザインと円筒形の形状が特徴的で、地上階から上部に向かって渦巻きのように広がっていく連続したスロープによって展示スペースが構成されています。

ライトのビジョンは、「来館者が移動しながら、新しい方法でアートを体験できる空間を作り出すこと」。外装はコンクリート製で、建物は貝殻や逆さのジッグラト(古代の階段式ピラミッド)に例えられることもあります。来場者は、ライトの目論見通り、螺旋状のスロープを緩やかに上りながらアートを楽しんでいます。天井部は大きな二重構造の天窓があしらわれ、外からの自然光が館内を明るく照らします。館内併設のカフェやライブラリーでも木材を使った環境への配慮、曲線美を生かしたデザインなど、ところどころにライトのこだわりが散りばめられています。しかし、美術館開館の5ヶ月前にライトはこの世を去り、グッゲンハイム美術館が彼の最後の作品となりました。

ライトは、1959年に91歳で亡くなるまでに1000以上もの建築物を設計し、「有機的建築」をデザインの基本概念とし、間仕切りのないオープンプランや、建築物の中と外の境界線を曖昧にした空間デザイン、スチール材やコンクリートなどの素材活用など、自然から学び、環境との調和を設計デザインに取り入れたことで知られています。2019年には、グッゲンハイム美術館を含むライトの8つの建築作品が、世界文化遺産に登録されました。

3. アートコレクション

グッゲンハイムは、印象派からポスト印象派、モダニズム、そして現代アートまで、幅広いモダンアートと現代アートのコレクションを所蔵しています。常設コレクションには、パブロ・ピカソ、ワシリー・カンディンスキー、パウル・クレー、マルク・シャガール、ジャクソン・ポロックなどの作品が含まれます。また、常設展示に加え、世界中の著名なアーティストや新進気鋭のアーティストによる特別展も開催されています。

Solomon R. Guggenheim Museum
New York, NY
1071 5th Ave, New York, NY 10128
www.guggenheim.org

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