実はシンプルな「メジャーリーグ」の仕組みを解説!ニューヨークには2球団!

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少年野球に高校野球、プロ野球と、日本人にとって「野球」は比較的身近な存在で、どういったスポーツなのかはイメージしやすいかもしれません。特に、近年においてはメジャーリーグ(MLB)で活躍する日本人選手が増えたことで、日本でもメジャーリーグ関連ニュースが簡単に入手できるようになったのではないでしょうか。嬉しいことに、ニューヨークにも2大球団が本拠地を置いており、ピンストライプの「New York Yankees」と、ベースボールに顔を描いたミスターメッツの「New York Mets」が、日々、ニューヨーカーたちを活気づけてくれています。

ビールやホットドッグを片手に家族や友人とスタジアムでスポーツ観戦をするカルチャーは、アメリカの典型的な娯楽の一つとしてしっかりと根付いていますが、ここでは、「アメリカの国技」「北米4大プロスポーツリーグ(NFL:アメリカンフットボール)(NBA:バスケットボール)(NHL:アイスホッケー)、(MLB:ベースボール)」の一角に数えられる「ベースボール」について少し深堀ってみたいと思います。

1. メジャーリーグベースボール (MLB)

メジャーリーグ(MLB)(別名:大リーグ)とは、アメリカの野球界における最高峰のプロ野球リーグ機構を指し、世界で最も人気が高く、長い歴史を持ったプロスポーツリーグの1つとして知られています。1869年に最初のプロ野球チーム「シンシナティ・レッドストッキングス」が設立されて以来、野球はアメリカンカ文化の中心的存在を担い、現在では、MLB所属の30チームが、アメリカンリーグ(AL)ナショナルリーグ(NL)の2つのリーグに分かれ、世界一を決めるワールドシリーズに向けた熱い戦いを繰り広げています。

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MLBは、主にスプリングトレーニングレギュラーシーズン、そしてポストシーズン(プレーオフ)の3つのシーズンで構成され、最後に行われるワールドシリーズの勝者に「アメリカ最強、世界最強チャンピオン」としての称号が与えられることになります。それでは、典型的なMLBの年間スケジュールとチャンピオンが決まるまでの流れを見て見ましょう。

1. スプリングトレーニング(2月~3月)

まずは、その1年間を戦うための体力作りを行うための約6週間にわたるトレーニングが行われます。同時に、チームの経営陣によって、主力選手としてベンチ入りさせる選手の選抜が行われます。

  • 目的: シーズン開幕に向けた準備。
  • 期間: 約6週間(2月中旬から3月末または4月初旬まで)。
  • 構造: スプリングトレーニングは、2つのリーグに分かれて行われます。
    • カクタスリーグ: アリゾナ州で開催。
    • グレープフルーツリーグ: フロリダ州で開催。
  • 主な内容: 選手たちはフィジカルを鍛え、レギュラーシーズンに向けた調整や、ロースター(選手名簿)入りを競います。試合が行われますが、公式の成績には含まれません。

2. レギュラーシーズン(4月~10月初旬)

基本的には、4月から始まる「レギュラーシーズン(162試合)」、10月からの「ポストシーズン(プレーオフ)」、10月下旬に開催される「ワールドシリーズ」で構成されています。ワールドシリーズは、アメリカのスポーツカルチャーにおいても非常に注目を浴び、とても盛り上がるイベントとなります。ボストン・レッドソックス、ニューヨーク・ヤンキース、シカゴ・カブスなどの歴史的なライバル関係も多く、ワールドシリーズが近づくにつれて、強い絆で結ばれたファン同士、ゲーム結果で会話に花がさくことも増えてきます。

  • 期間: 各チーム162試合、約6か月にわたって行われます。
  • 構造: MLBは30チームが、アメリカンリーグ(AL)とナショナルリーグ(NL)の2つのリーグに分けられ、それぞれのリーグは、さらに3つの地区(東、中央、西)に分かれています。基本的には、地区内での対戦カードが多く組まれますが、他の地区、他リーグとの試合が組まれることもあります。
  • 試合の種類:
    • 地区内対戦: 同じ地区のチームとの対戦が多く行われます。
    • 地区間およびインターリーグ対戦: 他の地区や、時には反対のリーグのチームとの対戦もあります。
  • オールスター休暇: 7月中旬にシーズンが一時中断し、トップ選手たちによるMLBオールスターゲームが開催されます。
  • タイブレーカー: 必要に応じて、ポストシーズンの出場枠を決めるために、レギュラーシーズン終了後に1試合のプレーオフが行われることがあります。

3. ポストシーズン(10月)

レギュラーシーズンの結果を受け、各リーグから6チームずつ選出された全12チームが、10月からの「ポストシーズン」に進むことができます。

  • 出場資格: 12チーム(各リーグから6チーム)がポストシーズンに進出します。
    • 各リーグの3つの地区優勝チームが自動的に進出します。
    • 3つのワイルドカードチーム(地区優勝を逃した中で最も成績の良いチーム)も進出します。
  • ポストシーズンの構造:
    1. ワイルドカードラウンド:
      • 各リーグの地区優勝チームとワイルドカードチームによる3試合制のシリーズ。
      • 上位シードのチームが全試合をホームで行います。
    2. ディビジョンシリーズ(DS):
      • ワイルドカードの勝者が他の2つの地区優勝チームと対戦します。
      • 5試合制。
    3. チャンピオンシップシリーズ(CS):
      • ディビジョンシリーズの勝者同士が対戦し、**アメリカンリーグチャンピオンシップシリーズ(ALCS)ナショナルリーグチャンピオンシップシリーズ(NLCS)**が行われます。
      • 7試合制。
    4. ワールドシリーズ:
      • アメリカンリーグとナショナルリーグのチャンピオンが対戦します。
      • 7試合制で、勝者がMLBワールドチャンピオンとして称えられます。
      • ホームフィールドアドバンテージは毎年交互に与えられます。

4. ワールドシリーズ(10月下旬~11月初旬)

  • チャンピオンの決定方法: 「秋のクラシック」とも呼ばれる、このワールドシリーズの勝者が、MLBチャンピオンとなります。この7試合制のシリーズは、アメリカンリーグとナショナルリーグのそれぞれのチャンピオンチームによって争われます。先に4勝したチームがチャンピオンとなり、栄冠を手にします。

2. マイナーリーグベースボール (MiLB)

メジャーリーグの下部組織であるマイナーリーグは、若手選手の育成やリハビリを目的とした組織です。MLBチームは、それぞれ複数のマイナーリーグチームと提携しており、選手たちは、AAA(トリプルA)、AA(ダブルA)、Aクラスなどとレベル分けされた各マイナーリーグでの経験を経て、メジャーリーグへのステップアップを目指していきます。ファンにとっても、将来のスター選手を間近で見るチャンスとなり、マイナーリーグの試合を楽しみにしているファンも多くいます。

3. 大学野球 (College Baseball)

アメリカの大学野球は、プロ入りを目指す若手有望選手たちにとって重要な舞台となっています。NCAA(全米大学体育協会)が主催する大会では、毎年6月にカレッジワールドシリーズが行われ、全国の大学チームが全米王者を争って戦います。MLB選手の多くは大学野球を経てプロに進むため、スカウト陣にとっても重要な場となります。ドラフト指名を目指し、選手たちはこの場でスキルやメンタルを磨きます。

4. 高校野球とリトルリーグ

高校野球もアメリカで人気があり、将来のMLB選手を養成する場となっています。12歳以下の子供たちが参加するリトルリーグは草の根レベルの大会として知られ、毎年開催される「リトルリーグ・ワールドシリーズ」には、世界中のチームが参加します。リトルリーグは、野球を通じてスポーツマンシップやチームワーク、努力の重要性を子供たちに教える場としても機能しています。

5. MLBドラフト

MLBでは毎年6月にドラフトが行われ、各チームが若く才能のある選手を指名します。選手たちは、主に大学や高校野球で活躍している選手の中から選ばれ、マイナーリーグでの育成選手時代を経てメジャーリーグを目指すことになります。ドラフトは、将来のスター選手が生まれる瞬間として、ベースボールファンにとっても注目のイベントです。

6. MLBの経済圏

MLBを経済的な面から見てみると、メジャーリーグが、アメリカ国内外において非常に大きな経済的影響力を持ち、とてつもなく巨大なビジネスでありことが分かります。分かりやすいものは、テレビ放映権、スポンサーシップ、スタジアム収益、グッズ販売などがあり、その他にも多岐にわたる収入源を持っています。

スタジアム体験: 近年では、スタジアム自体が観戦以上のエンターテイメント施設として進化しており、ファンは試合観戦に加えて、スタジアムだからこその様々な飲食やショッピング、アトラクションを楽しんでいます。現代の野球界では、テクノロジーの導入が進み、試合の運営や選手のトレーニング、ファンエンゲージメントに大きな影響を与えています。

テレビ放映権: MLBの試合はアメリカ国内外でテレビやインターネットを通じて放映され、これがリーグにとっては大きな収益源となっています。特に、プレーオフやワールドシリーズの視聴率が高く、放送局にとっても重要なコンテンツとなっています。

スポンサーシップ: 各チームやリーグ全体が、様々な企業とのスポンサー契約を結び、収益を上げています。ビール会社や自動車メーカーなどの大手企業がが主たるスポンサーとなっていますが、日本人メジャーリーガーの在籍するチームには、日本企業のスポンサーがつくことも珍しくありません。

7. 発展を遂げるMLBの経済圏

ファンを飽きさせず、メジャーリーグをさらに楽しいものにすべく、MLB機構では様々なルール改定やデジタル導入など、時代に合わせた変革にも積極的に取り組んでいます。

  • データ分析(セイバーメトリクス): ビリー・ビーンが率いる「オークランド・アスレチックス」の例に象徴されるように、野球においてはデータ分析が重要視されています。選手のパフォーマンスやチーム戦略を数値化し、勝利の確率を高めるための意思決定が行われるようになりました。映画『マネーボール』で描かれたように、特に限られた予算を持つチームにとっては、このようなデータの活用が成功の鍵となります。投手や投球コースや打球の軌跡解析などはもちろん、審判に取り付けたカメラで、より臨場感を味わえるような工夫が日々試されています。
  • ビデオリプレイ技術: 審判の判定を補完するために、ビデオリプレイ技術が導入され、特に微妙な判定に対する異議申し立てが可能となりました。これにより、試合の公正さが向上しました。
  • ファンとのつながり: ソーシャルメディアやチームの専用アプリケーションを通じて、ファンと選手、チームとの双方向コミュニケーションが行われています。また、試合中の監督やコーチへのインタビューなど、ファンは試合のハイライトや詳細情報などをリアルタイムで受け取ることができます。

8. 野球界における社会的影響

野球は単なるスポーツに留まらず、アメリカ社会における様々な変革や問題を反映してきました。特に、野球界は人種差別の問題や社会的公正を巡る議論の中で重要な役割を果たしてきました。

  • ジャッキー・ロビンソンの影響: 1947年、ジャッキー・ロビンソンがブルックリン・ドジャースに入団し、MLBで初の黒人選手となりました。彼のデビューは、アメリカ全土での人種統合と公民権運動に大きな影響を与え、現在もその功績は讃えられています。MLBは毎年4月15日を「ジャッキー・ロビンソン・デー」とし、全選手が彼の背番号42を着用して、人種差別に立ち向かった象徴的な存在ジャッキー・ロビンソンの功績を称えています。
  • 社会正義と選手の発言: 最近では、MLBの選手たちも社会的な問題について発言するようになっており、人種問題や警察暴力に対する抗議活動に参加する選手も増えています。また、MLBは平等と多様性の推進に努め、野球界における女性やマイノリティの地位向上にも取り組んでいます。

9. 現代の課題と未来への展望

MLBやアメリカの野球界は、人気スポーツとしての地位を保ちながらも、いくつかの課題に直面しています。

  • 若年層への普及: アメリカ国内では、特に若年層の間でアメフトやバスケットボールが人気を集めており、野球の観客層が高齢化しています。これに対抗するために、MLBは試合を短縮するためのルール変更や、若年層向けのマーケティングを強化しています。
  • 試合時間の短縮: 長時間の試合が若年層に敬遠される傾向があるため、試合時間の短縮に向けた取り組みが行われています。たとえば、ピッチクロック(投球時間制限)の導入や、延長戦でのランナー自動配置などが議論されています。
  • 国際的な拡大: MLBは、さらに国際的なリーグへと発展するため、海外市場の開拓に力を入れています。特に日本、韓国、ラテンアメリカ、ヨーロッパでの人気拡大を目指しており、国際大会の開催や育成プログラムを強化しています。

10. MLBの国際展開

これまでMLBは、伝統的にアメリカ国内が主な市場だと考えてきましたが、近年ではグローバル化の考えが浸透し、海外での人気も掴んでいこう取り組んでいます。海外出身の選手もMLBで活躍する時代となり、特に、日本、韓国、キューバ、ドミニカ共和国、プエルトリコ、ベネズエラなどからの有望な選手が多く在籍しています。野茂英雄さんやイチロー(元シアトル・マリナーズ)さん、大谷翔平さんはその代表格であり、こうしたスーパースターを輩出しながら、MLBは国際的リーグとしての発展を続けていきます。

その一環として、MLBでは定期的に日本やメキシコ、イギリスでの試合を開催し、国際ファン層の掘り起こしにも尽力しています。2024年には、エンジェルスからドジャースへ移籍したばかりの大谷翔平選手が韓国でのオープニングゲームに登場しその人気をさらに高めました。アメリカの野球界は、今後もその長い歴史と伝統的な要素をもとに、グローバル展開を視野に入れた活動を続けていくのではないでしょうか。

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