ニューヨークシティでは、ごみの削減・気候変動対策・都市の清潔さ向上を目的とする「コンポスト(生ごみ回収)プログラム」を2025年4月1日に開始しました。これは、the Department of Sanitation (DSNY)によって運営されるプログラムで、ニューヨークシティすべての住民に対してコンポストの分別が義務化されました。
コンポストは、有機物を分解して土に戻すための堆肥のことです。主に、家庭で出る野菜の皮や果物の芯、コーヒーかす、卵の殻などを使って作ります。これらの材料が微生物や虫の力で分解され、土壌に栄養を与える良質な肥料になります。加えて、コンポストを使うことで、ゴミを減らし、環境に優しい生活を送ることができるのです。
生ごみや庭の落ち葉などの「有機ごみ」は、NYCのごみの約1/3を占めています。これらを埋め立てごみにせず、別に回収・処理することで、埋立地の使用を減らし、温室効果ガス(メタン)も削減できます。また、回収された有機ごみは、堆肥(たいひ)や再生可能エネルギーに生まれ変わります。スタテンアイランドの堆肥施設や(The Staten Island Compost Facility)、ニュートンタウンの下水処理場(Newtown Creek Wastewater Treatment Plant)では、栄養豊富なコンポストが作られ、街の公園や庭などに利用されています他にも、食べ残しなどの生ごみを通常のごみ袋に入れないことで、臭いの軽減やネズミなどの害獣の発生を防ぐ効果があります。コンポストには様々な活用方法がありますが、下記にいくつかの事例を揚げておきます。
家庭菜園への活用
コンポストは、家庭菜園やガーデニングに最適な肥料となります。野菜や花の栽培に使うことで、土壌が栄養豊富になり、植物が元気に育ちます。特に、有機野菜を育てる際には化学肥料を使わず、コンポストを活用することで、自然な方法で栽培ができます。
花壇や庭の土質改善
コンポストを庭や花壇に撒くことで、土の質が改善され、排水性や通気性が向上します。これにより、植物の根がしっかりと育ち、花や植物が健康に育ちやすくなります。
ゴミの減量
コンポストは家庭から出る生ごみ(特に野菜の皮やコーヒーかすなど)を有効利用できるため、ゴミの量を減らすことができます。これにより、ゴミ袋の数が減り、環境への負担も軽減されます。
学校や地域でのエコ活動
学校や地域のコミュニティでコンポストを使うことで、環境教育にもつながります。生徒や住民が自分たちでコンポストを作り、再利用する方法を学ぶことができます。また、地域のガーデンで活用することで、集まった有機廃棄物を効果的に処理できます。
農業での土壌改良
小規模な農業でもコンポストを使用することで、土壌の質を高め、農作物の収穫量を増やすことができます。化学肥料に頼らずに自然な方法で土を肥沃に保つことができるため、環境への負荷も少なくなります。
これらの事例からわかるように、コンポストは環境に優しいだけでなく、家庭や地域、農業などさまざまな場面で活用できる資源です。それでは、具体的にコンポストとして分類されるものにはどんなものがあるのか見ていきましょう。
コンポストに入れていいもの(OK!)
「グリーン」=水分が多くて窒素が豊富なもの:
- 野菜くず・果物の皮
- コーヒーかす、コーヒーフィルター
- 紅茶のティーバッグ(プラスチック不使用のもの)
- 刈ったばかりの芝生
- 生花や植物の切れ端
- 卵の殻(砕いてから)
「ブラウン」=乾燥していて炭素が多いもの:
- 枯れ葉
- 細かく裂いた新聞紙
- ダンボール(ツルツルしていないもの)
- 紙ナプキン・キッチンペーパー(油がついていないもの)
- おがくず(薬品処理されていない木材から)
- 小枝などの細かい枝
コンポストに入れてはいけないもの(NG!)
- 肉、魚、乳製品(腐りやすく、動物を引き寄せる)
- 油やバター、ドレッシングなどの脂類
- 犬や猫などのペットのフン(病原菌のリスク)
- 病気にかかった植物
- ツルツル・コーティングされた紙
- プラスチック、ガラス、金属など(たとえ見た目が自然でもNG)
- 種がついている雑草(あとでまた生えてきます)
ポイント:
「グリーン:ブラウン=1:2〜3」くらいのバランスが理想的です。
そして、ときどきスコップなどでかき混ぜて、空気を入れてあげると分解が早まります!
プログラムの仕組み
- 家庭からの回収(カーブサイド収集)
住民は、食べ残し、食品汚れのついた紙類、庭のごみなどを、フタ付きの専用容器に入れて週1回、リサイクルと同じ日に出します。 - スマートコンポストビン
市内各所に24時間使える「スマートビン」が設置されており、どんな食品くずや植物ごみでも投入可能です。場所や使い方は「NYC Compostアプリ」で確認できます。 - 食品スクラップの持ち込み場所
地域の公園やコミュニティガーデンなどに、生ごみの持ち込み所が設置されています。場所によっては、肉や乳製品は受け入れていないこともあります。
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