スパイダーマンであるピーターパーカーが、カメラマンとして雇われている新聞社「デイリー・ビューグル(Dairy Bugle)」社が入居するビルが「フラットアイアンビルディング(Flatiron Building)」。です。ニューヨークの最も魅力的な建造物の一つですよね。この独特な三角形が魅力的なビルの歴史や特徴を紹介しましょう。
Fuller Building(フラービルディング) Flatiron Building
住所:175 5th Ave, New York, NY 10010 (in the Flatiron District)
高さ:285 feet(約87メートル)22階建て
アイロン形の敷地に立てられたビル
フラットアイアンビルは、元々、フラーカンパニー(Fuller Company)の本社として、5番街175番地(Flatiron District)に建設されました。当初の名称は「フラービルディング(Fuller Building)」です。建築を請け負ったのは、バーナム・アンド・カンパニー(Burnham and Company)建築事務所のダニエル・バーナム(Daniel Burnham)とフレデリック・ディンケルバーグ(Frederick Dinkelberg)という二人の建築家です。
1902年に完成した当時は、ニューヨークで最も高い建物の一つであり、そのアイロンのような独特な形状が注目を集めました。5番街とブロードウェイ、そして23丁目が交差する三角形の敷地に建ち、現在のフラットアイアンというエリア名も、それに由来しています。その後、映画やテレビ番組、写真などにも数多く使用され、世界的にも有名なビルとなりました。
フラットアイアンビルの〝風の伝説〟
初期の高層ビルの中でも、当時では画期的であった鋼鉄製の骨組みを採用したことで、スリムであり高い構造を実現。ボザール様式(Beaux-Arts)で、設立当初は高さ285フィート(約87メートル)、21階建てのビルとして建てられました(その後22階に拡張)。素材は、石灰岩(limestone)の土台に釉薬仕上げのテラコッタです。
また、建物の形状が独特な風の流れを生み、特に女性のスカートが風で舞う様子が話題になりました。そのエリアの風の流れが建物の周囲でどのように影響するか。こうした様子を見るためにも、さらに多くの人が集まったそうです。「23 Skidoo(立ち去れ)」という表現も、この現象を見に来た野次馬を警察が追い払ったことに由来しています。
アメリカ合衆国の国家歴史登録財
1902年のオープン以降、数十年にわたって、出版社やスタートアップ企業、専門職オフィスなどがこのビルに入居してきました。そして、1966年にはニューヨーク市のランドマークに指定され、1979年にはアメリカ合衆国の国家歴史登録財(the National Register of Historic Places)として登録されました。近年では、フラットアイアンビルに関する大規模な改修や所有権に関する争いがありましたが、歴史的な特性を保存しつつ現代化する計画が進行中です。フラットアイアンビルディングは、ニューヨークの建築と文化遺産を象徴する存在であり、都市デザインの過去と未来を結びつける重要な橋渡し役を果たしています。
フラットアイアンビルのトリビア30
以下はフラットアイアンビルディングに関する30の豆知識です:
歴史と建築に関する豆知識
- 完成年: フラットアイアンビルディングは1902年に完成しました。
- 元の名前: 元々はフラービルディング(Fuller Building)と呼ばれていました。建設業界の大物ジョージ・A・フラーにちなんで名付けられました。
- 形状の由来: 三角形の形状が洋服用アイロンに似ていることから、この名前が付けられました。
- 建築家: シカゴの著名な建築家、ダニエル・バーナムによって設計されました。
- 高さ: 高さは285フィート(約87メートル)、22階建てです。
- 革新的な高層ビル: 鋼鉄製の骨組みを使用した初期の高層ビルの一つです。
- 三角形の敷地: ブロードウェイ、5番街、23丁目が交差する三角形の敷地に建てられています。
- 建物の角度: 狭い端の幅はわずか約2メートルで、特定の角度から見ると非常に薄く見えます。
- ボザール様式: 古典的な列柱や装飾的なパターンなど、ボザール建築様式の特徴を備えています。
- 風の効果: デザインが独特な風の流れを生み、特に完成当初は通行人に影響を与えることで注目を集めました。
文化的・歴史的影響
- 文化的象徴: 20世紀初頭の近代性と革新の象徴として瞬く間に広まりました。
- “23 Skidoo”: 女性のスカートが風でめくれるのを見るために集まった男性たちを追い払う際、警察が使ったフレーズです。
- 写真の被写体として有名: 「世界で最も多く写真が撮られる建物の一つ」と言われています。
- 映画出演: 『スパイダーマン』、『ゴジラ』、『プラダを着た悪魔』など、多くの映画に登場しています。
- 芸術家へのインスピレーション: 著名な写真家エドワード・スタイケンやアルフレッド・スティーグリッツがこの建物を撮影しました。
- 国家歴史登録財: 1979年に登録され、その保存が保証されています。
- ニューヨーク市のランドマーク: 1966年に指定されました。
面白い豆知識
- 屋上の煙突: 屋上の煙突は、蒸気船の煙突に似ていると言われています。
- くさび形: 地元ではその形状が列車の前方にある三角形の「カウキャッチャー」に似ていると言われていました。
- 高さの錯覚: 狭さと高さが相まって、実際よりも高く見えます。
- 風に強いデザイン: 三角形のデザインは強風にも耐えられるように設計されています。
- 実際は平坦ではない: 名前とは異なり、長い側面にはわずかな曲線があります。
建設とデザイン
- 短期間で完成: わずか1年余りで建設されました。
- 革新的な配管技術: 高層ビルとしては初期の室内配管システムを採用しています。
- 独特な窓: 回転式窓(pivoting windows)が採用されており、当時としては珍しい設計でした。
- 地下鉄との接続: 初期の設計では地下鉄への直接接続が検討されましたが、実現しませんでした。
現代と商業的な事実
- オフィススペース: もともと出版社や広告代理店などが入居していました。
- 所有権の争い: 近年、所有権をめぐる争いや改修計画が話題になっています。
- 高級施設への転換計画: 歴史的外観を保存しつつ、高級スペースへの転換が計画されています。
- 技術対応: 100年以上の歴史を持ちながらも、現代のテクノロジーに対応できるよう定期的に改修されています。
フラットアイアンビル所有者の変遷
フラットアイアンビルディングの所有権の歴史は、これまでに多くの著名な団体や個人が関わっており、興味深い経緯をたどっています。
過去の所有者
- 最初の所有者(1902年)
この建物は、建設会社フラー社(Fuller Company)の本社として建設されました。当初は「フラービルディング」と呼ばれていましたが、その後「フラットアイアンビルディング」という名前が定着しました。 - ハリー・S・ブラック(1902年)
フラー社の会長であるハリー・S・ブラックが、その建設と初期の所有を監督しました。 - 様々な個人所有者(20世紀)
数十年にわたり、フラットアイアンビルディングは複数の個人投資家や所有グループの手に渡りました。 - スタビルグループ(1997年)
スタビルグループ(Stabile Group)が1997年にフラットアイアンビルディングを購入し、一定期間所有しました。 - ソルジェンテグループとパートナー(2006年)
2006年に、イタリアの不動産投資会社であるソルジェンテグループ(Sorgente Group)がビルの大半(52%)を取得しました。この所有グループには以下のパートナーが含まれています:- GFP Real Estate
- ABS Partners
- Newmark Holdings
現在の所有者
- GFP Real Estateとパートナー
2024年現在、GFP Real EstateはソルジェンテグループやABS Partnersなどと共に部分的な所有権を保持しています。しかし、所有者間の対立が建物の管理や再開発計画に影響を及ぼしています。 - 2023年のオークション
所有権の争いが原因で、2023年にフラットアイアンビルディングはオークションにかけられました。ジェイコブ・ガーリックというベンチャーキャピタリストが1億9000万ドルで落札しましたが、必要な手付金の支払いを怠り、取引が無効になりました。 - GFP Real Estateが所有権を再取得
オークションが無効になった後、GFP Real Estateとそのパートナーが所有権を再取得しました。現在、再開発計画を進めながら所有を維持しています。
フラットアイアンビルディングは現在改修中であり、今後は高級スペースとして利用される可能性や、オフィス賃貸が継続される可能性があります。その象徴的な地位にもかかわらず、建物の維持や所有権の問題は引き続き課題となっています。
フラットアイアンビルの10の見どころポイント
フラットアイアンビルディングを訪れる際、建物の形状以外にも注目すべきポイントがたくさんあります。次回の訪問をより楽しむための10の見どころを紹介します。
1. 三角形の建築デザイン
- 五番街、ブロードウェイ、23丁目が交差する場所に建つ、独特な三角形のデザインに注目してください。狭い端の幅はわずか約2メートルで、建築技術の驚異と言えます。
2. 装飾的なディテー
- ベザール様式に影響を受けた外壁のテラコッタ装飾を近くで見てみてください。渦巻きや花模様などのクラシックなモチーフが特徴です。
3. 光学的な錯覚
- 北側から建物を見ると、特定の角度で信じられないほど薄く見えます。この「カミソリのように薄い」効果は、写真家たちの人気の被写体です。
4. 風の流れ
- 建物の近くに立つと、デザインが生み出す独特な風の流れを体感できます。歴史的に、この風が通行人の服を持ち上げるという逸話で知られています。
5. フラー・トライアングル(Fuller Triangle)
- 建物の前にある三角形の小さな広場、フラー・トライアングルを観察してみてください。写真撮影に最適なスポットで、訪問者の休憩場所としても人気です。
6. 五番街の時計
- 建物近くの五番街にあるヴィンテージ時計を探してみましょう。ニューヨークの歴史的な魅力を感じさせるこの時計は、セルフィーにも最適なランドマークです。
7. マディソン・スクエア・パークからの眺め
- マディソン・スクエア・パークへ渡り、フラットアイアンビルディングのベストビューを楽しみましょう。この公園は、街の雰囲気を満喫しながらリラックスするのに最適なスポットです。
8. フラットアイアン地区の建築物
- 周囲の建物にも注目してみてください。歴史と建築のディテールが豊かなメットライフタワーやニューヨークライフビルディングなどがあります。
9. アートインスタレーション
- 広場やマディソン・スクエア・パークでは、時折開催されるアートインスタレーションをチェックしてみてください。このエリアでは公共アートプロジェクトがよく行われます。
10. イータリーや周辺スポット
- すぐ近くにあるイータリー(イタリアンフードマーケット)を訪れたり、数学博物館やユニオンスクエアなどの周辺スポットを探索するのもおすすめです。
フラットアイアンビルディングが登場する作品
フラットアイアンビルディングは、ニューヨークの象徴的な建物として、多くの小説や映画に登場し、活気に満ちた歴史ある都市を描く際に頻繁に使用されています。以下に、フラットアイアンビルディングが登場する15の有名な小説と映画を、作品の詳細、プロット、登場シーンとともに紹介します。
小説
1. 無垢の時代(エディス・ウォートン、1920年)
The Age of Innocence (Edith Wharton, 1920)
- プロット: ニューヨークの黄金時代を舞台に、主人公ニューランド・アーチャーが2人の女性との間で葛藤する愛と社会の期待の物語。
- フラットアイアンのシーン: マンハッタンの描写の中でフラットアイアンビルディングなどのランドマークが言及され、都市の近代化を象徴しています。
2. タイム・アンド・アゲイン(ジャック・フィニー、1970年)
Time and Again (Jack Finney, 1970)
- プロット: 主人公が1880年代のニューヨークへタイムトラベルする物語。
- フラットアイアンのシーン: 主人公が都市の進化を観察する中で、フラットアイアンビルディングが未来の象徴として登場します。
3. ライ麦畑でつかまえて(J.D.サリンジャー、1951年)
Catcher in the Rye (J.D. Salinger, 1951)
- プロット: 主人公ホールデン・コールフィールドがニューヨークをさまよいながら経験を語る物語。
- フラットアイアンのシーン: 建物自体は物語の中心ではありませんが、都市の雰囲気を形作る一部として言及されています。
4. ギルデッド・アワー(サラ・ドナティ、2015年)
The Gilded Hour (Sara Donati, 2015)
- プロット: 1883年のニューヨークを舞台に、2人の女性医師を中心に展開する歴史小説。
- フラットアイアンのシーン: フラットアイアン地区が街の成長を象徴する形で描写されています。
5. レット・ザ・グレート・ワールド・スピン(コルム・マッキャン、2009年)
Let the Great World Spin (Colum McCann, 2009)
- プロット: 1970年代ニューヨークで繰り広げられる複数の人物の交錯する物語。
- フラットアイアンのシーン: ニューヨークのランドマークとして、ビルが都市の活気を表現しています。
映画
6. スパイダーマンシリーズ(2002年、2004年、2007年)
Spider-Man Series (2002, 2004, 2007)
- プロット: ピーター・パーカーがスパイダーマンとしての生活と、恋人との関係、敵との戦いを描く物語。
- フラットアイアンのシーン: ピーターが働く新聞社「デイリービューグル」の本社として登場。
7. ゴジラ(1998年)
Godzilla (1998)
- プロット: 巨大な突然変異したトカゲがニューヨークを襲う物語。
- フラットアイアンのシーン: ゴジラがマンハッタンを破壊するシーンで、ビルが目立つ形で登場。
8. プラダを着た悪魔(2006年)
The Devil Wears Prada (2006)
- プロット: 若い女性が高名なファッション編集者のアシスタントとして奮闘する物語。
- フラットアイアンのシーン: ニューヨークのファッション業界を象徴する風景の一部として、外観が登場。
9. 最後の恋のはじめ方(2005年)
Hitch (2005)
- プロット: 恋愛コンサルタントが男性たちを支援し、恋を成功させる物語。
- フラットアイアンのシーン: ロマンチックなニューヨークのモンタージュで建物が登場。
10. 恋愛小説家(1997年)
As Good as It Gets (1997)
- プロット: 偏屈な作家とシングルマザー、芸術家の友情と成長を描いたドラマ。
- フラットアイアンのシーン: ニューヨークの魅力を映すシーンで建物が登場。
11. ニューヨーク、アイラブユー(2008年)
New York, I Love You (2008)
- プロット: ニューヨーク市のさまざまな場所で展開するロマンチックな短編物語の集まり。
- フラットアイアンのシーン: マンハッタンでの一瞬の関係を描く物語の中で背景として登場。
12. アイ・アム・レジェンド(2007年)
I Am Legend (2007)
- プロット: 科学者がウイルスによって廃墟となったニューヨークで生き残りをかけて奮闘する物語。
- フラットアイアンのシーン: 廃墟となったマンハッタンを映す壮大なシーンで登場。
13. アルマゲドン(1998年)
Armageddon (1998)
- プロット: 地球を破壊する隕石を止めるため、宇宙飛行士たちが挑む物語。
- フラットアイアンのシーン: ニューヨーク市が壊滅する場面でビルが一瞬映る。
14. マッドメン(2007-2015年、ドラマシリーズ)
Mad Men (2007-2015, TV Series)
- プロット: 1960年代のニューヨークで広告業界を描いたドラマ。
- フラットアイアンのシーン: その時代の美学を捉えた街並みの中で登場。
15. アジャストメント(2011年)
The Adjustment Bureau (2011)
- プロット: 謎の組織に運命を操作されながらも、愛する女性と結ばれようとする政治家の物語。
- フラットアイアンのシーン: ニューヨークを駆け巡る追跡シーンで背景として登場。
これらの作品に登場するフラットアイアンビルディングは、ニューヨークの永遠の魅力と活気を象徴する存在として描かれています。
《建築探報》
vol.1 グッゲンハイム美術館
vol.2 エンパイアステートビル
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