エンパイアステートビル《建築探報 vol.2》

光を通じて、ニューヨークの街にメッセージを届ける NEW YORK
光を通じて、ニューヨークの街にメッセージを届ける

ニューヨークの摩天楼には相応しい象徴的なビルディング

エンパイアステートビルは、ニューヨークで最も象徴的なランドマークです。世界恐慌という厳しい時代に、世界一の超高層ビル建設という争いを勝ち抜きました。そして、「現代のエンジニアリング能力を披露したい」というゼネラルモーターズ(GM)の元会長ジョン・J・ラスコブ(John J. Raskob)の熱い願いが込められています。まさに、ニューヨークの摩天楼に相応しいビルディングなのです。

1930年3月17日の着工から、わずか410日で完成。これは、週平均約4.5階のペースで進められた計算となります。高度な技術を駆使し、驚きのスピードで建てられたことが伺えます。その建設プロジェクトは3,000人超えと多くの雇用を生み出し、アメリカン・ドリームを体現しました。しかし、その多くが移民であり、過酷な労働条件下で5名の犠牲者が出たと記録されています。この数字は当時としては非常に少ないもの。安全性にも十分な注意が払われていたことが伺えます。まさに、「アメリカの繁栄と創造力」という言葉が相応しいビルです。

エンパイアステートビル、その建築と美の頂点

アールデコ様式の傑作とされるエンパイアステートビル。直線と幾何学模様を特徴とし、1930年代のモダンな美を象徴します。外観はシンプルであり優雅です。尖塔部分の独特なシルエットは、ニューヨークのスカイラインを描くのに欠かせない存在となっています。

最上階102回で、86階と102階に設けられた展望台。ここには、色々な思いを込めて、毎年何百万人もの訪問客が訪れます。中央のシャフトとエレベーターも当時最先端の技術の一つ。多くの人や物資を効率的に移動できるように設計されています。その最上階から見えるニューヨークの景色には、多くの人が見惚れてしまうといいます。さらに、耐久性と機能性も兼ね備え、時代を超え愛され続けるビルディングとなっています。

エンパイアステートビル内の観光スポット 

  • 86階展望台: 開放型デッキで、ニューヨーク市をパノラマで一望できます。
  • 102階展望台: 屋内型で、最近改修され、さらに高い場所からの眺望を楽しめます。
  • 「Dare to Dream(夢に挑戦)」展示:建設時の写真、スケッチ、アーティファクトを展示し、ビルディングの歴史を紹介しています。
  • サステナビリティツアー:エネルギー効率の高い改修など、建物のグリーン化への取り組みを紹介しています。
  • チケット:一般入場券、VIP体験、日の出や日没パッケージなど、さまざまな選択肢があります。
  • エンパイアステートビル・ランアップ:毎年、ビル内1,576段の階段を駆け上がるレースが開催されます。

映画とメディアのアイコン

このビルは数多くの映画でも重要な役割を果たしています。有名な例は、映画「キング・コング」です。1933年のオリジナル版で、巨大なゴリラがこのビルを登りました。その場面は映画史に残る名シーンとなっています。また、「めぐり逢えたら」では愛の象徴として登場しています。さらに「インデペンデンス・デイ」では破壊の象徴としても描かれました。このように映画を通じ、エンパイアステートビルの名は世界中で知られる存在となりました。

エンパイアステートビルが登場する映画

・キングコング King Kong(1933、2005)巨大な猿がエンパイアステートビルを登ります。主人公である猿の挑戦を表現する象徴的なシーンとなっています。
・めぐり逢えたら Sleepless in Seattle(1993)クライマックスに、エンパイアステートビルが登場します。ニューヨークを舞台とする、とてもロマンティックな映画です。
・思い出の恋 An Affair to Remember(1957)エンパイアステートビルが、重要なプロットポイントとして登場します。上記「めぐり逢えたら」と同様、カップルが旅行の一環として訪れる定番の場所となっています。
・エルフ Elf(2003)ウィル・フェレルのキャラクターが、クリスマスの喜びを広めるためにこのビルを訪れます。
・インデペンデンス デイ Independence Day(1996)エイリアンの攻撃シーンで、最初に破壊されるランドマークの1つとして描かれています。とてもドラマティックなシーンで、聴衆に大きなインパクトを与えました。
・ペット The Secret Life of Pet(2016)ニューヨークに暮らすペットたちの様子を描いたアニメ映画です。都会暮らしの犬たちの声を面白おかしく使える映画です。

光でメッセージを伝える

次に、エンパイアステートビルの照明を見てみましょう。毎晩、さまざまな色にライトアップされるこの特別な照明。これは、祝日やイベントごとに色が変わるように考えられています。例えば、独立記念日には赤・白・青の光が灯ります。また、セント・パトリックデーには緑色にライトアップされます。さらに、社会的なメッセージを伝えることもあります。このように光を通じて、ニューヨークの街にメッセージを届けているのです。

TOWER LIGHTS TODAY

マンハッタンを守る「雷の磁石」

エンパイアステートビルは、時に「Lightning Magnet(雷の磁石)」と呼ばれるます。それは、年間約25回も雷が落ちる避雷針の役割を果たしていることに由来しています。元々の計画では高さは1,250フィート(380 メートル)でした。これにアンテナが設置され、1,454フィート(443.2メートル)となっています。この尖塔は、当初は飛行船を係留する目的で設計されました。しかし、高高度での強風のため実現することはありませんでした。マンハッタン周辺での雷に関しては、ここエンパイアステートビルに集まるように設計されているのです。

エンパイアステートビル、観光地としての魅力

もちろん、観光客にとって必見のスポットで。年間400万人以上が訪れる人気の場所です。展望台からの景色は息を呑む美しさ。86階の展望台は開放的で、ニューヨークを一望できます。102階の展望台はさらに高く、感動的な眺望を楽しめます。エンパイアステートビルはニューヨークの文化に深く根ざしています。ニューヨーカーにとっても特別な存在となっています。

エンパイアステートビルは、歴史的、文化的、建築的に価値の高い建造物です。映画や照明、観光の場面でもその重要性は際立っています。これからも、ニューヨークを象徴する存在として人々を魅了し続けるでしょう。

エンパイアステートビルの詳細

建設期間:1930年3月17日~1931年4月11日(約1年)
オープン:1931年5月1日
ディベロッパー:ジョン・J・ラスコブ John J. Raskob(ゼネラルモーターズ元会長)
建築家:ウイリアム・F・ラム・オブ・シュレブ William F. Lamb of Shreve、ラム&ハーモン Lamb & Harmon(an architectural firm)
建設会社:スターレット・ブラザーズ&エーケン Starrett Brothers & Eken

高さ:元々は1,250 フィート(380 メートル)。アンテナを設置すると1,454フィート(443.2メートル)。
階数:102階
材質:鉄骨、インディアナ州産石灰岩、花崗岩、アルミニウム
フレーム:60,000トン以上の鋼材を使用、1,000万個のレンガで覆われています。
:6,514枚設置
デザインスタイル:アール・デコ

エンパイアステートビルは、国家歴史建造物にも指定されています。2010年代初頭、5億5000万ドル(847億円 1ドル154円計算)をかけ改修工事が行われました。結果として、エネルギー効率の高い建物として世界をリードしています。

《建築探報》
vol.1 グッゲンハイム美術館

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