人がありのままの自分を表現できる世界
LGBTQ+という言葉を聞いたことはありませんか?自らの性や性別について悩み、声を顰めてきた人たちがいます。そして、今なお、自分自身がどの層に当てはまるか悩む人もいます。しかし、多様性が認められ、マイノリティであった彼らが、その声をあげ始めました。
元来、人間の性別は「男女」の2つに分けられるという考えがありました。しかし、多様化が進み、今までのカテゴリーでは収まらない性別が認められ始めました。LGBTQ+です。これは、同性愛者や両性愛者、トランスジェンダーなどを指す言葉です。「セクシュアルマイノリティ」の総称として、広く使われるようになりました。
アメリカでの就職活動、政府や医療関連書類への必要事項記載。こうした場面で、ジェンダーに関する項目、性自認について聞かれることが増えました。今回は、その言葉の意味や違いについて見てみましょう。
LGBTQ+が意味するもの
LGBTQ+は、レズビアン、ゲイ、バイセクシュアル。さらに、トランスジェンダー、クィア/クエスチョニングを表す包括的な言葉です。そして、「+」は、これら以外の多様なアイデンティティも含むことを意味します。
レズビアン(L:Lesbian)女性を愛する女性。
ゲイ(G:Gay)男性を愛する男性。また、広く同性に惹かれる人を指すこともあります。
バイセクシュアル(B:Bisexual)複数の性に恋愛や性的な関心を持つ人。
トランスジェンダー(T:Transgender)生まれた時に割り当てられた性別とは異なる性自認を持つ人。この言葉には多様な性自認や表現が含まれます。
クィア/クエスチョニング(Q:Queer/Questioning)
・クィア 異性愛や伝統的な性別規範に縛られない人々を表す包括的な用語。
・クエスチョニング 自分の性的指向や性自認を探求している、あるいはまだ定まっていない人。
エルジービーティーキューアイエープラス
そして、最近ここに、「IA(インターセックス、アセクシュアル)」が加わりました。LGBTQIA+となり、さらに複雑なものとなっています。エルジービーティーキューアイエープラスと読みます。
インターセックス(I:Intersex)身体的な性特徴が典型的な男性または女性の定義に当てはまらない人。
アセクシュアル(A:Asexual)他者に対して性的な関心をあまり、または全く持たない人。他者への恋愛的な関心がほとんどない「アロマンティック(Aromantic)」も含まれます。
加えて「+」は、さらに多様なアイデンティティを表します。そこには、ノンバイナリー、パンセクシュアル。そして、ジェンダーフルイド、アジェンダーなどが含まれています。
性と性別の多様性を受け入れ、人がありのままの自分を表現できるようにする。さらに、平等、可視性、尊重を社会全体に広めることが、LGBTQ+の目標なのです。
多様な性を含んだ、LGBTQ「+」
ノンバイナリー(Nonbinary)
ノンバイナリーは、伝統的な男女といった二元的性別に当てはまらない性自認を持つ人。彼らは、自分の性自認が男女いずれか一方には当てはまらないことが多いと感じます。そして、その表現やアイデンティティは多様です。
ノンバイナリーの中には、以下のようなさまざまなアイデンティティが含まれます。
- ジェンダーフルイド(Genderfluid):性自認が固定されておらず、時間や状況によって「男性」「女性」などの間を行き来する人。
- アジェンダー(Agender):特定の性別の感覚がない、または性別を持たないと感じる人。
- ビッグエンダー(Bigender):複数の性別を同時に持つと感じる人。
- デミボーイ/デミガール(Demiboy/Demigirl):部分的に「男性」または「女性」と自認するが、それだけに限らないと感じる人。
ノンバイナリーは、自分の性別表現や性自認が、一般的な「男らしさ」や「女らしさ」の枠に収まりません。そのため、自由で多様な自己表現が特徴となります。彼らは、LGBTQIA+コミュニティの中でも重要な位置を占めています。そして、性自認の多様性を尊重し、ジェンダーの概念が固定的でないことを示します。
パンセクシャル(Pansexual)
パンセクシャルの「パン」は、ギリシャ語の「すべて」に由来します。「誰かを好きになる時に、その対象者の性別は気にならない」という人たちのことです。言い換えれば「性別関係なく、自分の好きになった人が好き。つまり、人間として好きだ」という考え方です。「全性愛者」とも呼ばれ、対象者の人間性にフォーカスしていることが多いようです。
「Bisexual(バイセクシャル)」とは、男女での異性同性どちらの性も恋愛対象にできるカテゴリーです。バイ(bi)とは、ラテン語で「2」を指します。ただし、あくまでも「相手の性別を意識して好意を寄せる」カテゴリーです。一方で、相手の性別は全く気にしないという層もいます。「Xジェンダー(男女どちらにも属さない)」「クエスチョニング(性自認や性的嗜好を模索中)」といった層です。言い換えれば、すべてのセクシャリティに対して恋愛感情を持つ、幅広い解釈のあるカテゴリーです。別名、オムニセクシャル(Omnisexual)とも呼ばれます。
ただ、これらの二つのカテゴリーに明確な差はありません。「男女」という性別を意識し、どちらにも恋愛感情あれば「バイセクシャル」です。また、恋愛をする際に性別は意識せず、どのような性別でも受け入れるという考え方。これが「パンセクシャル」です。
トランスジェンダー(Transgender)
トランスジェンダーとは、生まれたときに割り当てられた性別と、自分の性自認(自身が感じる性のあり方)が異なる人々を指す言葉です。性自認は、男性、女性、両方、どちらでもない、あるいは全く別のものと感じる、個人の深い内面の感覚です。彼らは、出生時の身体的特徴に基づき割り当てられた性別とは異なる性自認を持ちます。
トランスジェンダーのアイデンティティ
- トランスジェンダー女性:出生時に男性として割り当てられた。しかし、女性としての性自認を持ち、女性として生活する人。
- トランスジェンダー男性:出生時に女性として割り当てられた。しかし、男性としての性自認を持ち、男性として生活する人。
- ノンバイナリーのトランスジェンダー:男性や女性に完全には当てはまらず、ノンバイナリー、ジェンダークィア。ジェンダーフルイドなどの性自認を持つ人もいます。
移行(トランジション)という選択肢
トランスジェンダーの中には、自分の体を性自認に合わせる人もいます。その方法は、ホルモン療法や手術などの医療的方法です。しかし、必ずしも全員が医療的な対応を行うわけではありません。各トランスジェンダーの人々の道のりや表現は一人ひとり異なります。ソーシャル、医療的、あるいはその両方での移行(トランジション)は、非常に個人的な選択です。
トランスジェンダーのコミュニティは、LGBTQIA+の傘の中で重要な存在です。性の多様性、受容、平等な権利の推進において大きな役割を果たしています。
シスジェンダー(Cisgender)
シスジェンダーの、「Cis」は、ラテン語で「こちら側の」を意味する接頭辞です。生まれ持った性別と、自らが認識している性別が一致している人のことを指します。もとはトランスジェンダーを特別な存在とさせないための対義語です。出生時に「男性」として診断され、自分自身も「男性」と認識している人。もしくは「女性」と診断され、自分自身も「女性」と認識している人。この場合は、シスジェンダーと分類されます。
ヘテロセクシャル(Hetero Sexual)
トランスジェンダーやシスジェンダーは「性自認:自分の性別をどう認識するか」にフォーカス。対して、「性的嗜好:どの性別に好意を寄せるか」で分類するのが下記のカテゴリーです。
ヘテロセクシャル:異性に対して好意を持つ
ゲイ:男性が男性に対してのみ好意を持つ
レズビアン:女性が女性のみに対して好意を持つ
バイセクシャル:男性・女性どちらに対しても好意を持つ
「性自認」と「性的嗜好」は異なる考え方です。そのため、トランスジェンダーのヘテロセクシャル、シスジェンダーのヘテロセクシャルが存在します。他に、「LGBTQQIAAPPO2S」などのこのカテゴリーがあるように、今後もさらに増え続けるでしょう。このように各種様々な形、組み合わせがあることを知っておきましょう。
LGBTQ+を象徴する「レインボーカラー」とは
LGBTQ+では、その象徴として「虹の旗」が使われます。そこには、「多様性」や「団結」、「アイデンティティ」が表現されています。1978年、アーティストで活動家のギルバート・ベイカー(Gilbert Baker)のデザインです。虹を多様性を受け入れる象徴とし、美しさを表現する自然のシンボルとしました。旗に使われる各色には、それぞれ異なる意味があります。
- ホットピンク(後に除外): セクシュアリティ
- 赤: 命
- オレンジ: 癒し
- 黄色: 太陽の光
- 緑: 自然
- ターコイズ(後に除外): 魔法やアート
- 青: 平穏
- 紫: 精神
虹の色が多様であることは、幅広い性自認や性的指向、個々の体験を象徴します。この虹の旗は、世界的にLGBTQ+プライドのシンボルとして受け入れられ、可視性、そしてコミュニティ内の連帯を表すシンボルとなっています。
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