NYCマラソンを完走された方、これから挑戦しようと決意された方!おめでとうございます!ここでは、マラソンが「42.195km(約26.2マイル)」走る理由を探ります。
この微妙な小数点以下の数字はなんだ?と思ったことがある人も多いのではないでしょうか?発端は、1908年に開催されたロンドンオリンピックでのこととなります。この年の大会で、マラソンの距離が初めて42.195kmと決まりました。そして、その後の公式距離として定着します。その具体的な理由は以下の通りです。
42.195kmに繋がる3つの要因
オリンピック以前の距離
それまでのマラソンは、古代ギリシャのマラトンとアテネの距離を元にしていました。そのため、約40km(約25マイル)で行われることが多かったようです。
ロンドンオリンピックでの距離調整
1908年のロンドンオリンピック。当初は25マイル(約40.2km)の距離で行う予定でした。しかし、スタート地点はウィンザー城、ゴールは観覧席前にする必要がありました。ゴール調整の結果、距離が42.195km(26マイル385ヤード)となりました。
IAAFによる正式採用
この距離は、その後もマラソンの大会で採用され続けました。そして、1921年に国際陸上競技連盟(IAAF)が、この距離を正式に認定しました。
※IAAFは、2019年11月「World Athletics」に組織名称を変更しています。
このように、特定の歴史的背景と大会運営の事情によって定められています。そして42.195kmが、今や世界中のマラソンの標準距離となっています。
古代ギリシャ、マラトンからアテネの距離
次に、なぜ古代ギリシャのマラトンとアテネの距離が関係あるのか。近代オリンピックの成り立ちが関係しているようですので、そこを深掘りしてみます。
古代ギリシャの伝説
マラソンの起源は、紀元前490年に起こった「マラトンの戦い」とされています。この戦いで、ギリシャの兵士フェイディピデス(もしくはフィリッピデス)が、ペルシャ軍を破った勝利をアテネ市民に伝えるため、マラトンからアテネまで全力で走ったと伝えられています。この距離が約40km(25マイル)であったとされています。ここから「マラソン」という長距離走の概念が生まれました。
フェイディピデスの伝説: フェイディピデスは、マラトンからアテネまでの距離を走りました。しかし、実はそれ以前にスパルタへも走っています。ギリシャの応援を要請する長距離移動を行っていたとされています。この伝説が、のちのマラソン文化に大きな影響を与えました。しかし、ギリシャの地形や都市間の距離なども考慮されていたため、実際の距離ははっきりしていません。
近代オリンピックでの変遷
1896年、近代オリンピックがギリシャのアテネで始まりです。そこで、マラソン競技が正式種目として取り入れられました。この際、古代ギリシャの伝説を基に、約40kmの距離が採用されました。
アテネで行われた最初のマラソンは約40kmのコースで開催されました。その後のオリンピックでも、距離は概ね40km前後で実施。しかし、厳密な規定はなく、開催地ごとに多少のばらつきがありました。例えば、1900年のパリオリンピックでは約40.26km。1904年のセントルイスオリンピックでは約40km。開催地により多少のばらつきがあったようです。
1908年ロンドンオリンピック
イギリス王室にまつわる大人の事情
ロンドンオリンピックでの距離変更は、いくつかの要因が重なりました。先述の通り、スタート地点はイギリス王室の住むウィンザー城の中庭に設定されました。これは、当時のイギリス王室の要望です。王室の子どもたちが競技開始を見ることができるように配慮されたそうです。また、ゴールは観覧席の前にする必要がありました。王室関係者や観客の利便性が重視され、最終的に42.195kmに微調整されました。この距離は、非常に独特なものでしたが、ロンドンオリンピックの成功によって広く認識されるようになりました。
この距離の変更は、当時のロンドン市民にも大きな印象を与え、競技自体が大きな関心を集めました。特に、イタリアのドランド・ピエトリ選手が、ゴール手前で力尽きながらも完走を果たした劇的なシーンは、多くの人々の心に残り、マラソンの厳しさと感動を象徴するエピソードとして語り継がれています。
1921年に42.195kmが正式に採用
1908年のロンドンオリンピックは、大きな成功を収めました。そのため、それ以降の他大会でも40kmに近い距離でマラソンたを実施。その後、1921年に国際陸上競技連盟(IAAF)が、マラソンの公式距離を42.195km(26マイル385ヤード)に定めるに至ります。これにより、42.195kmが全世界でマラソンの基準距離として定着することになりました。
42.195km、ランナーにとっての意味
現代では、42.195kmという距離はランナーにとっての「挑戦の数字」として定着しています。平均的な体力や走力では完走が難しく、究極の持久力と精神力が試される距離。この距離を完走することで得られる達成感と自己成長は、多くの人にとって生涯の目標や誇りとなっています。マラソンが単なる競技以上の存在となったのは、この歴史と特有の距離によるものです。
また、マラソンが世界中で親しまれ、多くの都市が市民マラソンを開催しています。特に、ニューヨーク、東京、ボストンなどの大規模な都市マラソン。これらは、地域活性化や観光促進にも繋がり、現代社会でも重要な位置を占めています。
このように、42.195kmは偶然の要素が多分に含まれてはいます。しかし、長い歴史の積み重ねで、今日のランナーにとって特別な意味を持つ距離として定着したのです。
現代のマラソンと42.195kmの象徴性
現在、ボストン、ロンドン、ベルリン、シカゴ、ニューヨーク、東京の6大会を完走すると「シックススター・フィニッシャー」として認定されます。これは、ランナーにとって非常に大きな名誉となっています。そのため、多くのランナーが、42.195kmの道のりを人生の挑戦や困難の象徴と捉えてチャレンジを続けています。また、「ゴールにたどり着くための努力や挫折を経験する」ことに人生の意義を感じているランナーもいます。このように、42.195kmという距離は、単なる競技距離を超え、人々に夢や目標、自己成長の場を提供する特別な存在となっています。
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