2024年10月、害獣・害虫駆除サービス大手オーキンによって「最もネズミが多い都市2024年度版」が発表され、ニューヨーク州が、イリノイ州シカゴ、カリフォルニア州ロサンゼルスに次いで3位という報告が発表されました。実際にネズミの個体数を正確に測定することは難しく、測定方法などによってその順位は入れ替わってくるかと思いますが、確かに、初めてニューヨークに来た方は、ハトとリスの多さに加えて、ネズミの多さに驚かれるでしょう。
ニューヨークのネズミ問題は深刻
下記は、別のデータベースが割り出した「ネズミ問題が最も深刻な都市トップ10(ネズミの推定数)」の結果です。トップ3の顔ぶれは変わりませんが、ここでは、2位にニューヨークがランクインしていますね。これらのランキングは、街で報告されたネズミの目撃数、人口密度、インフラの老朽化、気候条件、廃棄物管理システムなど、様々な要素を基に割り出されています。
ネズミ問題が最も深刻な都市トップ10(ネズミの推定数)
1、イリノイ州シカゴ(推定150万~200万匹)
2、ニューヨーク州ニューヨーク市(推定200万~300万匹)
3、カリフォルニア州ロサンゼルス(推定100万~200万匹)
4、ワシントン DC(推定50万~100万匹)
5、カリフォルニア州サンフランシスコ(推定50万~100万匹)
6、ペンシルベニア州フィラデルフィア(推定40万~80万匹)
7、マサチューセッツ州ボストン(推定30万~60万匹)
8、メリーランド州ボルチモア(推定30万~50万匹)
9、ミシガン州デトロイト(推定20万~40万匹)
10、ワシントン州シアトル(推定20万~40万匹)
ネズミ問題が最も深刻な州(都市人口と報告数に基づく)
次に、「ネズミ問題が最も深刻な州(都市人口と報告数に基づく)」を見てみましょう。こちらでは、ニューヨーク州が堂々の1位です。やはり老朽化したインフラなども相まって深刻な問題に繋がっているのですね。
1、ニューヨーク州
2、イリノイ州
3、カリフォルニア州
4、マサチューセッツ州
5、ペンシルベニア州
6、メリーランド州
7、ミシガン州
8、ワシントン州
9、フロリダ州
10、ニュージャージー州
ついでに、国外のネズミ事情についても見てみましょう。
ネズミの推定生息数が最も多い国トップ10
- インド(推定5億~7億5,000万匹)(特に農業地域で問題)
- 中国(推定4億~6億匹)(都市部・農村部ともに)
- インドネシア(推定2億~3億匹)(主に農業害虫として)
- ブラジル(推定1億5,000万~2億5,000万匹)(都市部・農村部ともに)
- ロシア(推定1億~2億匹)(都市部を中心に広範囲)
- バングラデシュ(推定1億~1億5,000万匹)(農業地域と都市部)
- パキスタン(推定1億~1億5,000万匹)(主に農業地域)
- イギリス(推定6,000万~8,000万匹)(都市部と農村部の混在)
- フランス(推定5,000万~7,000万匹)(主に都市部)
- 日本(推定4,000万~6,000万匹)(主に都市部)
ネズミが最も多い国際都市トップ10
- ロンドン(イギリス)(推定800~1,000万匹)
- パリ(フランス)(推定600~800万匹)
- ムンバイ(インド)(推定1,000~1,200万匹)
- 北京(中国)(推定600~800万匹)
- 東京(日本)(推定500~700万匹)
- サンパウロ(ブラジル)(推定400~600万匹)
- マニラ(フィリピン)(推定300~500万匹)
- トロント(カナダ)(推定200~300万匹)
- メキシコシティ(メキシコ)(推定200~400万匹)
- カイロ(エジプト)(推定200~300万匹)
驚くことに、世界のトップ10となるとアメリカの都市名がリストに入ってきません。しかしニューヨーク市(推定200万~300万匹)ですので、7〜10位と同等と考えておいた方が良いかもしれません。
ネズミの生息数に影響を与える要因と対策
それでは、実際にネズミの生息について詳細を見ていきます。まず、密接に関係しているキーワードとなるのが「人口密度」、「衛生インフラ」、「気候条件」、「農業慣行」、「都市開発」、「廃棄物管理システム」、「駆除対策の効果」などとなります。大都会の暮らしは、寝るところも食べるものも多くあり、ネズミにとって楽園なのです。
先日、オリンピックが開催されたフランスのパリや東京でも、昔からネズミ被害に悩まされているそうです。ここでは、各都市のネズミ対策などについて見ていきましょう。
パリの場合
フランスのパリ市には、推定600〜800万匹のネズミが生息されているとされ、これはパリ市の人口の2倍以上にあたるそうです。同市では、パリを綺麗にするためのキャンペーンを、2023年から150万ユーロ(約2億4690万6000円 1ユーロ=164.65円で計算)の予算を掛けて実施。公共ゴミ箱の完全密閉化、スマートゴミ箱の導入(自動圧縮機能付き)、ネズミの巣の定期的な特定と駆除などに取り組んできました。
また、市民参加型の対策も積極的に行なっています。例えば、住民向けの専用アプリでネズミ目撃情報を収集し、飲食店に対する厳格な衛生基準の適用、路上での食事残渣放置に対する罰金制度を確立するなどです。しかし、ネズミ被害減少に対する目立った効果は得られず、パリ市議会では、「平和に共存するための調査委員会」を設置することにせざるを得なくなりました。この動きは賛否を呼んでいます。政治家の中には「パリはこれに甘んじてはならない」と落胆した声がある一方、動物愛護団体は今回の動きを前向きに評価し、「有害生物の駆除ではない方法を支持する」と声明を発表しています。
ニューヨークの場合
ニューヨークでは、「Rat Czar(ネズミ対策責任者)」の任命、データ分析を活用した「Rat Information Portal」の運用、夜間のゴミ収集時間の規制強化など、統合的な管理システムでネズミ対策に乗り出しています。また、ドライアイスを使用した巣の窒息作戦、不妊化餌の使用実験、密閉型ゴミ容器の義務化、違反者への高額な罰金制度などの革新的な駆除方法にも積極的に取り組んでいます。
また、「Rat Action Plan」では、建設現場での新規制導入(24時間以内の巣の処理義務)、商業地区でのゴミ収集時間帯の制限(深夜〜早朝のみ)、路上レストランの規制強化などを積極的に行っています。その他、環境への影響も低く、駆除率も90%と高い「Rat Ice作戦(ドライアイスをネズミの巣に入れ窒息させる方法)」、ITを使った最新技術の導入などにも取り組んでいます。
東京の場合
東京都では、ネズミ撲滅に向けた体系的なアプローチに取り組んでいます。例えば、23区それぞれの保健所による定期的な調査と対策、飲食店への定期的な衛生検査、下水道システムの定期的なメンテナンスなどです。また、予防的措置として、生ゴミの厳格な分別収集システム、商店街や飲食店街での集団的な防除活動、建築物の設計段階からのネズミ対策(隙間封鎖など)、市民への啓発活動も行っています。
3つの都市に共通する効果的な対策
- ゴミの適切な管理と収集
- 下水道システムの定期的な点検
- 建物の修繕と隙間封鎖
モニタリング
- 定期的な生息調査
- 市民からの通報システム
- データベースの構築と活用
法的規制
- 飲食店への衛生基準の設定
- 違反者への罰則制度
- 建築基準への防鼠対策の組み込み
これらの都市では、単なる駆除だけでなく、予防と管理を組み合わせた総合的なアプローチを採用しています。特に注目すべき点は、市民の協力を得ながら、長期的な視点で対策を実施していることです。
地域別の特別対策:
- マンハッタン:
- 地下鉄駅周辺の重点監視
- 深夜営業店舗への特別規制
- ブルックリン:
- コミュニティガーデンでの対策強化
- 住宅密集地での餌場撲滅作戦
罰則システム:
- 初回違反:1,000-3,000ドル
- 再犯:5,000-10,000ドル
- 悪質な場合:営業許可の一時停止
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