スイングステートを深掘り!

これまでの歴史でも、スイングステートでの戦いが、アメリカ大統領選に劇的なドラマを生んだ。 USA
これまでの歴史でも、スイングステートでの戦いが、アメリカ大統領選に劇的なドラマを生んだ。

大統領選の結果を左右するスイングステートとは?

アメリカ大統領選挙において、勝敗のカギとなるのが「スイングステート」。別名で、バトルグラウンドステート(Battleground State)、パープルステート(Purple State)とも呼ばれます。これらの州は、民主・共和党ともに有力支持基盤を持ち、開票予測が難しくなっています。ここでの結果が選挙結果に直結することもある、非常に重要な州となります。

過半数270人を取り合う選挙人団制度

なぜ、スイングステートは生まれるのでしょう。一つは、アメリカが国民投票ではなく、選挙人団(Electoral College)を採用しているためです。全米合計538人の選挙人団のうち、過半数270人を獲得する戦いです。ほとんどの州で「勝者総取り」システムが採用され、その州での得票数が最も多い候補者が全ての選挙人を獲得します。そのため、支持基盤が定まっていない州では激戦が起こるという。

《関連記事》4年に一度のアメリカ大統領選

スイングステートが重要視される理由

選挙の際、いつも同じ政党の支持を表明する州があります。カリフォルニアは民主、テキサスは共和といったものです。スイングステートは、どちらの政党に偏ることもなく、その時々で政党支持を「スイング」させる州。これらを「スイングステート(Swing State)」と呼びます。

スイングステートでは、1%未満の僅差で勝敗が決することも珍しくありません。ここでの結果はのちに重大な影響を与えるため、候補者は緻密な戦略を立て選挙に臨みます。時間、資金、広告などの選挙運動リソースを投入し、州ごとの特定問題に合わせた政策提案や公約なども行います。

選挙ごとに変わるスイングステート!?

スイングステートは毎回同じではなく、選挙ごとにその顔ぶれは変わります。歴史的にスイングステートの州もありますが、その時の状況で新たにバトルグラウンドに加わる州もあります。そのファクターになりうるものをいくつか下記に記載しています。

人口動態の変化

州の人口が変化し、有権者の行動に影響を与えることがあります。例えばアリゾナ州やジョージア州は、伝統的な共和党の支持基盤でした。しかし、都市部での若者や多様な人口の増加に伴い、競争は激しくなっています。テキサス州も人口動態の変化で競争力が高まっている州の一つです。しかし、まだ完全にスイングステートになった訳ではありません。

経済状況

州の経済パフォーマンスや特定産業が、有権者に影響を与えることもあります。例えば、ラストベルト(ペンシルベニア州、ミシガン州、ウィスコンシン州)。ここでは、製造業の雇用や貿易政策などの経済問題が、その立ち位置に影響を与えます。他にも、農業、エネルギー、テクノロジーなどが重要課題となることもあります。

政治キャンペーン戦略

特定州に重点を置き、州の政治的傾向が変わることもあります。例えば、ある特定州でのアウトリーチ、組織・広告に多くの資源を投資したとします。そうなれば、その州の有権者の支持を得ることができるかもしれません。

候補者の魅力

特定の候補者の個人的な魅力により、州の支持が変わることもあります。例えば、オハイオ州は伝統的にスイングステートでした。しかし、トランプ氏による労働者階級へのアプローチで、共和党寄りの州に傾きました。フロリダ州も、移民、医療、退職問題などの課題を抱えます。こうした課題に対するアプローチが支持政党を変わるきっかけになります。

時間と共に変わったスイングステート事例

  • バージニア州: かつては共和党の支持が強い州でした。最近の選挙では、特にワシントンD.C.近郊の都市部や郊外の成長で、民主党寄りへとシフトしています。
  • ノースカロライナ州: ラーレーやシャーロットなどの都市部が成長し多様化。この州は競争力が高まっています。
  • オハイオ州アイオワ州: 歴史的に重要なスイングステート。最近の大統領選挙では、より共和党寄りになっています。今後再びスイングする可能性もあります。
  • フロリダ州は常に激戦州であり、選挙人団において重要な州です。

常にスイングステートとして考えられる州もあります。しかし、人口動態変化や経済的関心、政治的動向で、他州がスイングステートに浮上することもあります。こうした状況が、大統領選挙をさらに予測不可能なものにしているのです。

過去2回選挙における激戦州

2016 年の米国大統領選挙の際の激戦州

コロラド州(ヒラリー・クリントン)
フロリダ州(ドナルド・トランプ)
アイオワ州(ドナルド・トランプ)

ミシガン州(ドナルド・トランプ)
ネバダ州(ヒラリー・クリントン)
ニューハンプシャー州(ヒラリー・クリントン)

ノースカロライナ州(ドナルド・トランプ)
オハイオ州(ドナルド・トランプ)
ペンシルベニア州(ドナルド・トランプ)

バージニア州(ヒラリー・クリントン)
ウィスコンシン州(ドナルド・トランプ)

これら激戦州のうち、ヒラリー・クリントン氏はコロラド州、ネバダ州、ニューハンプシャー州、バージニア州の4州で勝利。計 32 票の選挙人票を獲得しました。一方、最終的勝利を収めたトランプ氏は、合計 114 の選挙人票を獲得しました。フロリダ、アイオワ、ミシガン、ノースカロライナ、オハイオ、ペンシルベニア、ウィスコンシンの各州です。これらの激戦州での勝利は、トランプ氏の最終的な勝利に大きく貢献しました。

2020年の米国大統領選挙の際の激戦州

アリゾナ州(ジョー・バイデン)
ジョージア州(ジョー・バイデン)
ウィスコンシン州(ジョー・バイデン)

ミシガン州(ジョー・バイデン)
ペンシルベニア州(ジョー・バイデン)
ネバダ州(ジョー・バイデン)

ノースカロライナ州(ドナルド・トランプ)
フロリダ州(ドナルド・トランプ)

2020年は、2016年にトランプ氏を支持したいくつかの重要なスイングステートをバイデン氏が奪回。これらの州での結果は、バイデン氏の勝利にとって重要です。彼は306票の選挙人票を獲得し、トランプ氏の232票を大きく上回りました。アリゾナやジョージアでは、人口動態や政治的変化が浮き彫りとなりました。

《関連記事》
歴代アメリカ大統領選の戦績を見てみよう
「MAGA」のスローガンを掲げるトランプ陣営

2024年大統領選、注目のスイングステート7州

今回の大統領選では、下記の激戦州がスイングステートとして考えられています。大きく「RUST BELT(3州)」と「SUN BELT(4州)」に分けられます。

RUST BELT(ラストベルト)

ラストベルト(Rust Belt=錆びた工業地帯)。このエリアは、米国北東部および中西部に位置する、かつて製造業が盛んだった工業地帯を指す地理的・経済的な場所です。「ラスト(Rust)」とは「錆」のこと。これらの地域でかつて隆盛を極めた鉄鋼業、自動車産業、機械製造業が衰退し、工場が閉鎖sれて錆びついた(rust)状況を象徴しています。

特に、ペンシルバニア州、オハイオ州、ミシガン州、インディアナ州、イリノイ州、ニューヨーク州の一部などは、19世紀から20世紀半ばにかけてアメリカ産業の中心、特に鉄鋼や自動車の生産で世界的に有名でした。デトロイト(自動車産業の中心)やピッツバーグ(鉄鋼業の中心)などが、その代表的な都市です。

しかし、20世紀後半になると、以下の理由でラストベルトの経済は衰退し始めました。

  • 海外での製造コストの低い国への産業移転
  • オートメーションの進展により必要な労働力の減少
  • サンベルト(アメリカ南部・南西部)の経済成長に伴う人口や産業の移動
  • 競争力の低下と産業構造の変化

これにより、多くの工場が閉鎖され、失業率が上昇し、都市や地域の衰退が進みました。このため、産業的な錆びつきや経済的な低迷を象徴する「ラストベルト」という名称が定着しました。ただし、近年では一部の都市が再生や多様化を進め、技術産業や教育・医療など新しい分野での成長を模索し続けています。

ペンシルベニア州(Pennsylvania):(選挙人19人)

都市部と農村部の有権者が混在する、中西部ラストベルト(工業地帯)の激戦州です。ハーシーズ(HERSEY’S)ユナイテッド・ステイト・スティール(United States Steel)などが本拠地を構え、交通の要としても重要視されてきました。バイデン氏の故郷でもあり、2020年の勝利には大きな役割を果たしました。現在、世論調査では接戦が予想されていますが、ハリス氏がトランプ氏に僅かな優位を保っています(クイニピアック大学世論調査)。

ミシガン州(Michigan):(選挙人15人)

選挙結果の鍵を握るラストベルト(工業地帯)州です。バイデン氏は、トランプ氏が2016年に翻弄したミシガン州を奪回。この州も民主党に傾く兆候があり、現時点の世論調査ではハリス氏がリードしています(クイニピアック大学世論調査)。ミシガン州の有権者は製造業に関わる者が多く、同州の抱える経済問題は、デトロイトなどの都市部の有権者を中心にとても関心の高いトピックとなっています。

ウィスコンシン州(Wisconsin):(選挙人10人)

ウィスコンシン州もラストベルト(工業地帯)のスイングステートです。2016年にトランプ氏に取られたウィスコンシン州もバイデン氏は取り戻しています。民主党に傾きつつあり、若年層や都市部の有権者から支持を得ているハリス氏が、現時点ではトランプ氏をリードしています(270TOWIN.COM)。同州の都市部と農村部が混合した人口形態は、複雑な選挙情勢を作り出しますが、全国的な傾向を示す良い指標としても捉えられています。

SUN BELT(サンベルト)

サンベルト(Sunbelt)は、米国南部および南西部の地域を指す経済・地理的な用語です。この地域は温暖な気候が特徴で、主にカリフォルニア、テキサス、アリゾナ、フロリダなどがここに含まれます。

サンベルトは、第二次世界大戦後に急速な経済成長を遂げました。この地域では、製造業、特に航空宇宙産業や軍需産業が発展し、後にはテクノロジー産業、エネルギー産業、サービス業、そして観光業が盛んになりました。また、温暖な気候と豊富な土地資源が人々を引き付け、人口が増加しました。結果、サンベルトは1960年代からの人口移動や経済成長が顕著となり、特に「ラストベルト(アメリカの北東部および中西部の工業地帯)」の衰退と対照的に見られるようになりました。現在、サンベルトは経済的にも重要な地域となり、アメリカ国内外からさらなる移住者を引き寄せています。

サンベルトの中で、今回スイングステートとして注目されているのは下記4州。メキシコ国境にもほど近く、ヒスパニックや黒人層での獲得が勝敗のカギを握りそうです。

ノースカロライナ州(North Carolina):(選挙人16人)

ノースカロライナ州は歴史的に共和党の牙城です。2020年の選挙戦ではトランプ氏が獲得しました。2024年現時点では、トランプ氏がわずかにリード(49% 対 47%:クイニピアック大学世論調査)。最近の傾向では、特に都市部において、民主党が勢力を伸ばしています。経済政策や医療施策が、有権者の心情に大きな影響を与えそうです。

ジョージア州(Georgia):(選挙人16人)

世界的な飲料リーダーのコカ・コーラ(Coca Cola)やアメリカの航空会社デルタ航空(Delta Air Lines)が本社を置く南東主要州。伝統的に共和党寄りの州ですが、最近では民主党にとっても競争力のある州となっています。最近の世論調査では、トランプ氏がハリス氏を僅差でリード(50% 対 44%:クイニピアック大学世論調査)、熾烈な争いが繰り広げられています。都市部の人口増加と人口動態変化で、ますます重要度が高まっています。特に、アトランタなどの都市部での民主党支持が高まり、地方部では共和党支持の傾向も強く残っています。

アリゾナ州(Arizona):(選挙人11人)

伝統的に共和党寄りの州。最近では民主党支持者も増えています。1996年以来、民主党の大統領候補に投票はしていませんが、人口構成が変化したことで両党の注目を集めています。世論調査では、ここの選挙戦は熾烈であり、移民や医療問題が課題です(270TOWIN.COM)。特に、ヒスパニック系の人口動態が選挙に大きな影響を与えるかもしれません。

ネバダ州(Nevada):(選挙人6人)

最近の選挙では民主党寄りでしたが、競争の激しい州です。最近の選挙では民主党に傾いていますが、依然として熾烈であることに変わりありません。ヒスパニック人口の多さが、決定を左右するかもしれません経済の回復と雇用の増加が、ここでの有権者にとっての主要な関心事です。

激戦州は、選挙人の票数、投票率、経済状況など、さまざまな要因に左右されます。選挙が近づくにつれて、これらの州は両党の選挙活動の焦点になると予想されます。より詳細な情報を得るには、270toWin などのリソースやその他の選挙予測サイトをご覧ください。

コメント

PAGE TOP
タイトルとURLをコピーしました